ロボットを取り巻く日本と世界の動き」
ロボット先進国である米国をはじめとして、世界中の多くの国、さらにはそれらの国のさまざまな現場において、ロボットは日々活躍している。世界的に有名なロボットとしては「ドローン」や掃除機ロボットの「ルンバ」などがあるが、これ以外で有名なところとしてはAmazonの物流センター内で働く自律運搬ロボットの「Kiva」がある(参考映像)。
さらには、コミュニケーションロボットという分野においても「JIBO」「Musio」(写真参照)「cognitoys」などの多くのロボットが存在している。これらは一般家庭の中においてペットのような存在でもあり、また子供らにとっては小さな家庭教師にもなりうる存在である。企業から一般家庭において、ロボットが活躍する時代が到来したと言える。そしてそれは日本においても同様である。
「Musio」
日本のロボット技術のレベルも高い。日本の製造業の現場で活躍している国産メーカーのロゴが入った多くの産業用ロボットを実際に目にしたことがある人にとっては、日本のロボット技術は世界トップクラスだと思っていることであろう。
それは事実であり、また2015年から日本企業であるソフトバンク社が販売を開始したコミュニケーションロボットの「Pepper」は、今後世界中に大きなインパクトを与え、活用領域も拡がっていくことだろう。
2007年に米国で、さらには翌年の2008年から日本をはじめ各国で発売開始となったAppleの「iPhone」のように、Pepperはビジネス分野に、そして一般家庭に対しても大きな衝撃をもたらす存在となりうることであろう。既に日本国内においては多くの企業がPepperを接客や受付などの業務で活用し始めている。
ビジネス分野におけるロボットの国内最新活用状況
現在、日本を代表するロボットとなりつつあるPepperについて、それのビジネス分野における活用状況について触れてみたいと思う。Pepperはまずは一般家庭向けに販売を開始したが、その一般家庭向けPepperをビジネス分野で利用する企業が続出した。
SMBC日興證券では各種セミナーの司会進行役として、みずほ銀行では窓口での「おもてなしロボット」として、ネスレ日本ではコーヒーマシンの販売コーナーにおける接客スタッフとしてPepperを活用している。
また、Pepperは多言語をしゃべることができるという特徴を持っているために、各鉄道会社が駅構内での外国人サポート役としてPepperを活用しているケースも増えてきた。さらにはPepperが持つ人工知能機能の1つである感情認識エンジンを接客に活用するケースも出てきている。
Pepperは目の前の人間の性別や年齢を推測できるだけでなく、感情を認識したり、さらにはPepper自身が感情生成エンジンを駆使して感情を持つことができるロボットである。ちなみに感情生成機能がついたロボットは世界中どこにも存在していなかった。
そしてPepperの感情認識機能を用いて、人間の感情(楽しそうにしている、つまらなそうにしている、怒っている、さみしそうにしているなど)を理解した上で接客のパターンをリアルタイムに変えるという、まさに人間のような接客が可能となっている。
さらにはPepperが持つ人工知能とは違う、より優秀な外部の人工知能をPepperがネットワーク越しに利用することで、接客の幅も広がる可能性を秘めている。人工知能の活用が今後のビジネスの世界を大きく左右する時代の到来とも言える。
クラウド、通信、AIの融合が魅力的なロボットの世界を創る
Pepperをはじめ、最近世界中で発表されているロボットの特徴はクラウドと通信と人工知能の融合を実現したものとなってきている。持ち運び可能な小さなロボットの中には、ポケットの中のスマートフォンのテザリング機能を利用してWiFi経由でインターネットにアクセスし、クラウド上に用意された人工知能サービスと連携して人間との会話を実現している。
この流れは今後さらに発展されると思われ、クラウド、特にモバイルクラウドとロボットの融合には期待している。例えばPepperのようなロボットの場合だと、お客様へのクーポン券をQRコードにして胸のタブレット端末の画面に表示させ、お客様はそのQRコードを自身のスマートフォンでスキャンし、指定されたウェブサイトにアクセス可能となる。
ウェブサイト上のクラウドサービスとお客様を結びつけることで次への購買へとつながる。またスマートフォンの中のアプリからクラウドを経由して目の前の、さらには遠く離れたところにいるロボットを遠隔制御することさえも可能である。
このように、クラウド、通信、人工知能とロボットの融合は面白い世界をつくり出せるはずではあるが、ここで鍵となるのは人工知能の知能レベルである。古くから世界中の多くの研究者によってさまざまな形の人工知能システムが開発されてきてはいるものの、まだまだ望むレベルのものが存在しているというわけではない。そこで次の章においては人工知能が今後企業や世の中にどのような影響をもたらすのかについて言及する。