Salesforceは「Slack」のような機能がついた「Google Docs」に似たコラボレーションツールを手がけるQuipを買収する。買収金額は5億8200万ドルで、この金額にはすでにSalesforce Venturesが保有している株式は含まれない。
では、なぜSalesforceはQuipを買収するのだろうか。
今やコラボレーションがあらゆるものの鍵であることは明らかであり、文書管理やコメントの交換は重要だ。ワークフロー、ボット、プロジェクト管理もまた重要であることは間違いない。しかし、Salesforceは本当に文書管理市場で戦う必要があるのだろうか。「Microsoft Office」とSalesforceの組み合わせでも構わないのではないだろうか。あるいは、「Google Docs」でも良いかもしれない。
一方で、MicrosoftとSalesforceはすでに「Lightning」コンポーネントでOfficeとCRMを緊密に統合する計画を明らかにしている。
では、SalesforceのQuip買収には、どのような意味があるのだろうか。いくつかのポイントが考えられる。
- 誰もが「Slackのような体験を提供できる」というストーリーを必要としている。Slackはコラボレーションの分野で多くの人の心をつかんでおり、メディアへの露出も大きい。QuipはSalesforceに、Slackを話題にする層に対して訴えかける要素を与えてくれる。
- 文書管理機能の導入は、顧客の維持やSalesforceの差別化に役立つのだろうか?Do.comのことを思い出してみてほしい。Do.comの機能がMicrosoft OfficeやGoogle Docsに統合されたことに意味があったと主張するのは難しい。
- Quipは、リアルタイムコラボレーションで「Chatter」にできなかったことを提供できるのか?Salesforceが掲げるリアルタイムコラボレーションのビジョンは正しいが、同社はすでにその多くを実現している。Quipが付加的な機能追加以上の何かを提供できるかどうかは明らかではない。
- Microsoftは敵なのか、味方なのか?SalesforceはLinkedInの買収競争でMicrosoftに破れた。そして今度は、文書管理の分野で動きを見せようとしている。これは単なる偶然かもしれないし、そうではないかもしれない。Macquarie ResearchのアナリストSarah Hindlian氏は、調査ノートの中で次のように的確にまとめている。
SalesforceがQuipを活用する方向性にはさまざまな可能性があるが、今回の買収によって、Salesforceはビジネス生産性ツール(歴史的にMicrosoft Officeが支配してきた市場)の提供に向かうことが可能になる。一方で、Quipのコラボレーションツール、コミュニケーションツール、ワークフロー管理ツールは、コラボレーションツールを提供するスタートアップSlackの急速な成長でも示されている通り、高まりつつある集中管理型コラボレーションツールに対する企業の需要に対応するものになる可能性がある。例えば、Quipは営業チームやマネージャーが、商品の売り込みや契約などの場面でコラボレーションを行うことを可能にするかもしれない。ビジネスプロセスツール(MicrosoftがOfficeでリードしている市場)とうまく適合するベンダーの買収は、両社がLinkedInの買収入札で競合したあとであるだけに、興味深い動きだ。両社がLinkedInの買収を試みたのは、Salesforceと「Dynamics CRM Online」の両方が、どちらもより洗練され、機械学習を用いたリードジェネレーションツールを必要としていたためだと考えられる。このことは、Microsoftは敵か味方かという疑問を生む。これはどちらの可能性もあり、現時点ではどちらなのかは不明だが、多分野にわたる相互交流が起こりつつある兆候が見え始めていることは確かだ。
SalesforceがQuip買収。文書管理ソフトウェア市場で戦う必要があるのだろうか?
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。