こんにちは、さとうなおきです。「週刊Azureなう」では、先週の1週間に発表されたMicrosoft Azureの新機能から、筆者の独断と偏見で選んだトピックについて紹介していきます。
今週は、米国アトランタでMicrosoft Igniteカンファレンスが開催されています。すでに、「『Microsoft Ignite』開幕:アドビとの提携強化を発表」、「『Windows Server 2016』、10月中旬に一般提供開始へ」などの記事も出ていますね。次回は、Igniteでの発表を中心にお届けする予定ですので、お楽しみに。
ドイツリージョンが一般提供に
2015年11月に、Microsoftのクラウドサービスの英国リージョン、ドイツリージョンを提供することが発表されていました。
今月前半にGA(一般提供)になっていたAzureの英国南部/英国西部リージョンに続いて、ドイツ中部/ドイツ北東部リージョンがGAになりました。今後、Office 365とDynamics CRM Onlineのドイツリージョンも提供予定です。
ドイツの法令を遵守するため、ドイツリージョンは、顧客データを2つのドイツリージョン内だけに格納し、パブリッククラウドネットワークとは分離された専用のネットワークを使い、ドイツ企業であるT-Systems Internationalが顧客データへのアクセスを管理するようにしています。
ドイツリージョンのGAによって、GAになっているAzureリージョンは30リージョンとなりました。さらに、韓国に2リージョン、米国国防総省向けに2リージョンが計画されており、合計で34リージョンになる予定です。
Azureのリージョンや各リージョンでサポートされているAzureサービスについては「Azureリージョン」、Azure上の各リージョンにおけるデータの取り扱いについては「Microsoft Azure — Where is my customer data?」をご覧ください。
今回のGAの詳細については、Azure Blogのポスト「Microsoft Azure Germany now available via first-of-its-kind cloud for Europe」、Official Microsoft Blogのポスト「Microsoft Cloud expands with first-of-its-kind offering for Europe」、Microsoft Azure Germany、Azure Germany Cloud Blogをご覧ください。
世界中のAzureリージョン
Project Bletchley:Bletchley v1でEthereumのコンソーシアムブロックチェーン環境の構築が簡単に
Microsoftは今年6月に、プライベートなブロックチェーン基盤上でスマートコントラクトをよりセキュアに実施するためのアーキテクチャに取り組む「Project Bletchley」を発表していました。Project Bletchleyについては、記事「マイクロソフト、ブロックチェーンのオープンアーキテクチャ『Project Bletchley』発表」、「Azureブロックチェーンで拡張性と機密情報保護を実現する『Bletchley』『Cryptlets』とは」をご覧ください。
今回、Project Bletchleyの取り組みの一環として、Ethereumのコンソーシアムブロックチェーン環境の構築を簡単にしました。具体的には、Azureポータルやコマンドラインで、Azure Resource Manager(ARM)テンプレート「Blockchain - Ethereum Private Consortium Network」を指定し、必要なパラメーターを指定するだけで、多数のVMで構成される環境をAzure上に簡単に構築できます。
Ethereumコンソーシアムのネットワークアーキテクチャ
詳細は、Azure Blogのポスト「Project Bletchley - Blockchain infrastructure made easy」、GitHubのARMテンプレート、手順を解説しているドキュメント、記事「MS、『Azure』上のブロックチェーンミドルウェアの初期版をリリース」をご覧ください。
また、Project Bletchleyで新たに導入されたコンセプトであるCryptletに関して、さらに詳細な情報が公開されました。詳細は、Azure Blogのポスト「Bletchley - release & roadmap - Cryplets deep dive」、ドキュメント「 Project Bletchley - The Cryptlet Fabric」をご覧ください。
Azure App Service:Mobile Apps Node.js SDK v3.0.0 リリース
Azure App ServiceのMobile Appsは、モバイル アプリケーション向けのバックエンドを提供するMBaaS(Mobile Backend as a Service)です。
Mobile Appsの概要
Mobile Appsは、ネイティブ開発(iOS、Android、Windows)、Xamarin、Apache Cordova向けのクライアントSDKを提供しています。また、サーバーサイドのバックエンドでは、.NET、Node.js向けのサーバSDKを提供しています。
今回、Mobile AppsのNode.jsサーバSDKのv3.0.0がリリースされました。主な新機能は、次の通りです。
- ユーザーごとのテーブル:認証が必要なデータベーステーブルへのリクエストの際に、特定の認証済みユーザーに属するデータだけを返すフィルタリングが可能に
- Webhook:テーブルに対するデータ操作の完了後に、外部のHTTPエンドポイント(Azure Functionsなど)を呼び出し可能に
- レコードの有効期限:テーブル内のレコードに対する有効期限を設定することで、有効期限切れのレコードを取得できなくするようにすることが可能に
- ソフト削除されたレコードの取得:クエリの際に(通常は含まれない)ソフト削除されたレコードをクエリ結果に含めるように設定可能に(ソフト削除とは、削除リクエストの際に、実際のテーブル内のレコードを削除する代わりに、削除済みフラグを示す列の値を変更すること)
- IDによるレコードの取得:IDを指定して1件のレコードを取得可能に
- オブジェクト ベースの更新、削除:これまでは可能だったJSON形式のオブジェクトを基にしたクエリに加えて、オブジェクトを基にした更新、削除も可能に
テーブル関数でのコールバック:テーブル操作関数が、コールバックのサポートを追加
詳細は、Azure Blogのポスト「Announcing the release of Azure Mobile Apps Node SDK v3.0.0」、ドキュメント「Azure Mobile Apps Node.js SDK の使用方法」、SDKドキュメント、GitHubリポジトリをご覧ください。
Azure API Management:ロードマップ情報を公開
Azure API Managementは、既存のAPIに対するAPIゲートウェイを提供するサービスです。
Azure API Managementは、頻繁に機能拡張され続けています。今回公開された「Azure API Management Product Roadmap」では、開発完了した/開発進行中の/次のアップデートで追加される/バックログにある機能拡張の一覧を確認できます。
人気の高いタスク管理サービス「Trello」を使っており、コメントや投票も可能なので、Azure API Managementをお使いの方は、是非フィードバックをお願いします。
詳細は、Azure API Management Blogのポスト「Announcing the Azure API Management roadmap」をご覧ください。
Azure API Managementのロードマップ
それではまた来週。
- 佐藤直生 (さとうなおき)
- 1999年から、OracleでJava、アプリケーションサーバ、開発ツールなどのエンジニア/テクニカル エバンジェリストを担当後、2010年9月にMicrosoftに入社。Microsoft Azureの黎明期からエバンジェリスト/テクノロジストとしてAzureを担当。オライリーなどの技術書の監訳、翻訳も多数。 ブログ: https://satonaoki.wordpress.com/ Twitter: https://twitter.com/satonaoki