GitHubはサンフランシスコで開催されたデベロッパー向けイベント「GitHub Universe 2016」の基調講演で過去最多となる新機能のアップデートの発表と今後の取り組みについて紹介した。
2008年4月の創業から9周年を迎えたGitHubは、クラウドベースのソフトウェア開発プラットフォームとして存在感を強めており、グローバルで1400万以上のユーザーが利用するまでに成長している。昨年から開催しているUniverseを同社のビジョンや新機能を発表すると同時に、幅広いジャンルから招いたスピーカーによるソフトウェア開発に関する最新情報やノウハウ、事例を共有する機会としている。今回は1500以上のデベロッパーが参加し、基調講演はライブストリーミングでも公開された
創業者でCEOのChris Wanstrath氏は基調講演では過去最多となる新機能などを発表した
創業者で最高経営責任者(CEO)のChris Wanstrath氏は基調講演で「デベロッパーのことを考えた開発を常に行っている」とし、GitHub上での共同作業の進捗状況を管理しやすくする「Projects」、アップロードされたコードに行単位でもコメントできる「Code Review」など、ユーザーが開発を円滑に進めるために求めていたワークフローを強化する機能が数多く実装された。
GitHubはAppleやMicrosoft、SAPなどの企業に加えてNASAといった政府機関でも活用されており、Fortune 100に入る企業の44%に採用されているという。企業向けソフトウェアの「GitHub Enterprise」ではユーザーの二段階認証の義務付けやアカウント管理機能を強化しており、社内で使いやすいようカスタマイズできる機能も以前から取り入れられている。
GitHub.comとGitHub Enterpriseはコードベースが同じであることから、両方を使うユーザーには違和感なく扱え、GitHub.comをビジネスライクに使うこともできる。5月の有料プランの見直しでは、リポジトリ数からユーザー数での課金体系に変更されており、開発状況にあわせた使い方が選べるようになっている。
多数機能が追加されたとはいえ、GitHub単体で開発に必要な全ての機能をカバーすることは難しく、むしろサードパーティーと柔軟に連携することで業界全体でのエコシステム構築を目指している。「Integrations Directory」で連携できるサードパーティーをまとめて紹介したり、APIを利用しやすくする機能が追加されており、他にも異なるサービスでのシングルサインオンを可能にしたり、情報を共有するフォーラムの運営も来年から行うと発表している。
開発ワークフローだけでも多くの機能がアップデートされている
オープンソースは業界スタンダードへ
GitHubはオープンソースソフトウェア(OSS)の手法で開発されており、企業としてもOSSの開発手法を後押しする動きを強めている。複雑化するソフトウェアのソースコードを一から書き上げていくのは非効率的であり、オープンにすることでバグの発見や運用トラブルが回避でき、何よりもコスト削減につながることからグローバル企業の多くがOSSを取り入れており、ゲーム開発やロボティクス、人工知能(AI)、仮想現実(VR)といった専門分野で活用が進んでいる。
同様の理由から行政機関での活用も進んでおり、基調講演ではホワイトハウスや英国政府での採用事例が紹介された。ホワイトハウスの技術アドバイザーのAlvand Salehi氏は、「アメリカ政府は年間60億ドルをソフトウェア開発に費やしており、オープンソース化することで費用を削減するだけでなく、コードを広く再利用できる資産として公開していく」としている。
OSS開発手法を進めるためのプラットフォームとしてGitHubは活用しやすく、パブリックコメントやアイデア募集でも役立つという。日本でも昨年からそうした動きが始まっており、和歌山県や神戸市がオープンデータの活用や開発を進める場としてGitHubを活用していると発表している。
AIやVR、ロボティクスなどの専門分野にもOSSの開発手法を取り入れられ始めている
ホワイトハウスではソフトウェアを国の資産と捉え、オープンソースによるコードの共有や再利用を進めている。左はホワイトハウスの技術アドバイザーのAlvand Salehi氏