日本マイクロソフトがこれまで5年間継続してきた「働き方改革」の活動は外部にも広がり、好影響を及ぼしている。業務の生産性を向上させるツールを提供する同社らしい活動だが、ユーザー視点からすると「投資対効果」が知りたいところだ。
5年間の活動で広がる日本マイクロソフトの「働き方改革」
「ワークスタイル変革から働き方改革へと、これまで5年間活動を続けてきて、外部からも大きな反響を得ている。さらなる業務の効率化や生産性向上に貢献していきたい」
日本マイクロソフトの平野拓也社長は10月17日、同社がこの日から21日までの1週間、さまざまな働き方を支援する「働き方改革週間2016」を実施するにあたって開いた記者会見でこう強調した。
日本政府の「働き方改革推進室」が掲げた看板にならって「働き方改革推進会社」と記した看板を手にする日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長(右)と織田浩義 執行役員常務パブリックセクター担当
同社は2011年から「日本におけるテレワークの推進への貢献」を掲げ、まずは自社内のワークスタイル変革に取り組み、2014年と2015年はこの活動に賛同する法人を募って「テレワーク週間」を設け、テレワークを実現するマイクロソフト製品を試用できる支援策などを実施してきた。
そして2016年は「働き方改革週間」へと名称を変更。その理由について平野氏は、「テレワークが業務の生産性向上を図る新しい働き方であることを強調するとともに、日本政府が現在取り組んでいる“働き方改革推進”と協調していることをアピールするため」と説明した。
これまでの活動の結果、同社では2011年から5年間で、社員1人あたりの売り上げを示した事業生産性が26%向上し、社員満足度調査によるワークライフバランスへの取り組みも40%改善。女性の離職率も40%減少したという。
日本マイクロソフトでは5年間の働き方改革推進によって事業生産性を26%向上させた
また、賛同法人数も2014年の32法人から2015年は651法人、そして今年は833法人に拡大。これら賛同法人においても「テレワーク週間2015」の期間による調査から、業務の生産性が1割向上すると感じた法人が28%、2割が15%、3割が9%との結果が得られた。さらに、4分の1の賛同法人から売り上げや利益を2割アップできるとの期待の声が寄せられたという。
働き方改革がベンダーにもユーザーにもビジネスに直結
こうした結果を踏まえて印象的だったのは、「今年、賛同いただいた833法人のうち、およそ4割がパートナー企業だ。これは働き方改革がビジネスの機会としてとらえられてきていることを表している」との平野氏のコメントだ。また、日本マイクロソフトのパブリックセクター担当でテレワーク推進も担う織田浩義執行役員常務も「これからは働き方改革の推進が企業にとって新たな儲けにつながる」と語った。つまり、働き方改革がベンダーにとってもユーザーにとってもビジネスに直結するというわけだ。
平野氏はさらに、「現在のIT市場の規模は日本のGDPの5%程度だが、働き方改革の領域でITが活用されるようになれば15%ほどの上乗せが期待できる。ITにとって働き方改革の領域は、まさに有望な新規市場だ」とポテンシャルの大きさを強調した。
ただ、筆者が気になったのは、働き方改革の推進が業務の生産性向上に効果的なのは確かだろうが、それにどれくらいの投資が必要なのかだ。ユーザー視点からすると、投資対効果が知りたいところではないか。ITの導入事例は、とかく効果ばかりが喧伝され、その効果を出すのにいくらかかったかは、ほとんど明らかにされない。
とはいえ、働き方改革はすべての企業に関わる話だけに、かかるコストの面も見える化すれば、もっと多くの企業が取り組みを検討する方向に動くのではないか。それは、ツールを提供している日本マイクロソフトとパートナー企業が協力すれば、決して無理な話ではないのでは、と考える。
もちろん、働き方改革といっても、取り組む企業の状況はそれぞれ異なり、オフィス環境や規則・制度にも手をつけなければ効果は生み出せない。そのあたりはコンサルティングの領域になるだろうが、企業ごとの働き方改革への取り組みとともに投資対効果を明らかにした形の事例を、業種別や企業規模別にある程度揃えられないものか。ユーザーにとっては大いに判断材料になるはずだ。
日本マイクロソフトでは今後もさらにこの活動を加速していくという。日本のすべての企業に関わる非常に重要な取り組みである。だからこそ、もう一歩踏み込んで、IT業界ではタブー視されがちな投資対効果の見える化を期待したいところである。