ISIDら、ブロックチェーン技術を活用した地方創生プロジェクト

NO BUDGET

2016-10-30 07:00

 電通国際情報サービス(ISID)は10月19日、同社オープンイノベーションラボ(イノラボ)とエストニアGuardtime、シビラと共同で、ブロックチェーン技術を活用して地方創生を支援する研究プロジェクト「IoVB(Internet of Value by Blockchain)」を同日付で立ち上げると発表した。その第一弾実証実験として、宮崎県東諸県郡綾町と連携し、ブロックチェーン技術を活用した有機農産品の安全をアピールする仕組みを構築するという。

研究プロジェクトの概要

 イノラボはISIDが2011年4月に設置した研究開発組織で、「街づくり」「観光」「スポーツ」などの領域を中心にさまざまな技術研究やサービス開発に取り組んでいる。これまでにも、大阪駅北口の大型複合施設「グランフロント大阪」における街と来街者とのコミュニケーション基盤の導入や、東京都品川区などとの協働による、訪日客と地域ボランティアガイドのリアルタイムマッチング実証実験などを手掛けてきた。その経験・知見を生かし、このプロジェクト全体の企画・運営ならびにシステム構築を担当する。

 エストニアに本拠を置くIT企業のGuardtimeは、同国が世界に先駆けて導入したブロックチェーン技術を活用した行政サービス「e-Estonia」の中核プラットフォーム「X-Road」の開発・運用を行う先進企業であり、ブロックチェーン技術の社会実装において豊富な実績を有する。当プロジェクトにおいてはその知見と、同社が開発したブロックチェーン「KSI(Keyless Signature Infrastructure)」を提供する。

 シビラは、先進的なブロックチェーンの研究開発およびソリューションを提供する日本発のベンチャー企業。FinTech以外の領域におけるブロックチェーンの仕組みを先行開発しており、当プロジェクトにおいては、ブロックチェーン構築に関する知見と、データベースとして使用できる独自開発の高速処理ブロックチェーン「Broof」を提供する。

 3者はそれぞれの強みを持ち寄り、地方創生にむけた様々な領域において、ブロックチェーン技術を社会実装すべく、今後も多くの企業や自治体とともに調査・研究を進めていくとしている。

第一弾実証実験の概要

 綾町は特定非営利活動法人「日本で最も美しい村」連合の加盟自治体の一つで、1988年制定の「自然生態系農業の推進に関する条例」のもと、食の安全を求める消費者のため厳格な農産物生産管理を行っている。

 綾町の有機農産品は、独自の農地基準と生産管理基準に沿って「金」「銀」「銅」のランクが付与され販売されているが、そのランク付けに至るプロセスや価値が、消費者には十分に届いていないという課題を抱えていた。綾町は、綾町独自の取り組みの厳格さや、出荷する有機農産品の品質の高さを消費者に向けてさらにアピールしていくため、今回の実証実験に参加するとのこと。


「金」マークをつけて販売される綾町産カボチャ

 実証実験は、2016年10月~2017年3月の予定で実施され、以下の2点のポイントを検証していく計画。

  • 生産管理情報をブロックチェーンで実装することによる効果
  •  綾町の各農家は、植え付けから収穫、肥料や農薬の使用、土壌や農産物の品質チェックなどを、町の認証のもと実施しており、今回の実証実験では、これら全ての履歴を、シビラの製品「Broof」を活用して構築するブロックチェーン上に記録する。

     綾町はこのプロセスを経て出荷される農産品に、独自基準による認定マークとともに固有IDを付与。消費者はこの固有IDで検索することにより、その農産品が間違いなく綾町産であること、綾町の厳しい認定基準に基づいて生産されたものであること、それらの履歴が改ざんされていないことをインターネット上で確認することが可能となる。ブロックチェーンによるこの公証の仕組みが、消費者の行動に影響を与える可能性があるか、また、仕組みの運用が地方自治体にとって無理のないレベルであるかを検証していく。


    綾町が運営・管理するブロックチェーンの概要
  • ブロックチェーンの信頼性担保
  •  今回の実験で生産管理情報を登録するブロックチェーンは、綾町が運営・管理するいわゆる「プライベート型」のブロックチェーンとなる。このブロックチェーンを、Guardtimeが提供するブロックチェーン「KSI(Keyless Signature Infrastructure)」と組み合わせることで、情報の信頼性をさらに高めた仕組みとする。

     IoVBでは、このように2つのブロックチェーンで正当性を保証する仕組みを、PoP(Proof of Proof)と定義し、その実効性について検証していく。


2つのブロックチェーンによる正当性保証(PoP)の仕組み

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