前回、前々回は、今年発表されたiPhone 7の特徴と、そこからわれわれのビジネス、業務への活用を考えてきた。今回は、iPhoneをボランティアに活用し、さらにはそこから考えられる、新たなビジネスの可能性について考えてみたい。
震災に埋もれた写真をiPhoneデジタル復元できる
震災が起きた地域では、がれき撤去といった作業ばかりがボランティアではない。2011年の東日本大震災では、パソコンを提供して設置をするボランティアを日本マイクロソフトの社員が行っていたし、土砂に埋もれてしまったアルバムを1つ1つ丁寧に救い出し、写真を復元するボランティアも行われていた。しかし、写真の土砂を排除し、色を復元したものは、そのままの物理的な写真として保存し続けるには限界がある。
現在、北海道南富良野のボランティアセンターは、PFUの「Omoidori」という機器を利用し、2016年8月の台風で被災した方々の写真を洗浄・電子化する活動をしている。
北海道南富良野のボランティアセンターは、PFUの「Omoidori」という機器を利用し、2016年8月の台風で被災した方々の写真を洗浄・電子化する活動をしている
Omoidoriとは、iPhoneアルバムスキャナーだ。iPhoneでアルバムの写真を撮るためのスタンドだと考えればいいと思う。iPhoneなどのスマートフォンでアルバムに貼ってある写真を撮影しようとすると、どうしても蛍光灯や外部からの光が写り込んでしまったり、テカリが出てしまったりする。あるいは斜めに写ってしまって明らかに写真そのもののようにはならない。プロフェッショナルなカメラマンが写真を撮影する場合は、スタジオに持ち込み、いくつものライトを当ててテカリのないように撮影するが、その設備を用意することは素人では難しいし、コスト的も多額なものになってしまう。
しかし、iPhoneとOmoidoriがあれば一気に解決するのだ。Omoidoriを使ってiPhoneで撮影するだけで、紙の写真はそのままデータ化され、半永久的に保存することが可能になる。
「Omoidori」は、iPhoneでアルバムの写真を撮るためのスタンドのようなもの。簡単な操作で紙の写真をそのままデータ化できる
Omoidoriの最大の特徴は、iPhoneおよびカメラの難しい知識がなくても、iPhoneのカメラさえ操作できれば誰でも写真を電子化できるところだ。
現代において、写真をわざわざ印刷しない人は圧倒的に増えた。筆者が子供の頃に街のあちこちにあった「写真屋さん」は、ほとんど見かけなくなった。そういう意味でも、この活動はとても素晴らしいものだと言えるだろう。では、Omoidoriは、こういった非常時にのみ役立つものなのだろうか。このOmoidoriを、平常時に活用できる事例をいくつか見てみよう。