海外コメンタリー

セキュリティなど難題山積のIoT--課題を真に解決する道は? - (page 2)

Oliver Marks (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-12-08 06:30

 長期的な観点から見た場合、「チップ上のシステム」、すなわちSoCレベルでのセキュリティが発達し、ハードウェアメーカーがセンサ上にセキュリティレイヤを組み込むようになるはずだ。シリコンチップという観点での現状を知るには、ARMの「TrustZone」というセキュリティ技術を見てみるのがよいだろう。

 戦略的な観点から見た場合、容易に侵入できる軽量バックエンドとセキュアな環境の分かれ道は、設計とエンジニアリングの段階からエンドツーエンドで質の高いセキュリティを実現できるかどうかにある。このため、起業家に価値をもたらす近代的なシステムや専門性が当たり前のものとして期待されるようになるなか、セキュアなコネクテッドデバイスもデジタルサービスプロバイダーに要求されるようになるはずだ。

 逆に言えば、大ざっぱな作りで簡単にアクセスを許すようなコネクテッドデバイスは、個人情報をインターネット上で公開するに等しい、あまりにもリスクの大きなものと言える。

 サービスプロバイダーという観点から見た場合、現時点でIoTは2つの側面を有しており、どちらもデジタル競争におけるより大きな競争と関連付けられる。

 1つ目の側面はM2Mを用いた産業インターネットだ。これはここ15年の間に、重装備なテレメトリシステム(遠隔地で測定したデータを有線や無線、その他の手段によって、記録や分析のための受信ステーションに送信するシステム)から進化し、「従来の」エンタープライズITシステムとともに直線的に成熟、成長してきたものだ。このような産業インターネットの例として、大型タービンなどの重機械を監視して「故障までの予想時間」を得たり、ERPやその他のエンタープライズソフトウェアとの間で交わされるデータフローを扱うものが挙げられる。

 もう1つの、より新しい側面は、新たなセンサの開発やビッグデータによって可能になった爆発的な製品イノベーションだ。これにより「デジタルな世界に存在するデバイス」とあらゆる規模の「物理的なモノ」の間でやり取りされるデータを、近代的なデジタルバックボーンに向かわせる流れが生み出される。これが今日の社会に大きな影響を生み出している、コネクテッドデバイスにおける新たな側面だ。

 AT&TでIoT戦略及び製品管理担当エグゼクティブを務めるMobeen Khan氏は2016年、こういった変革のペースについて、通信会社の観点から筆者に語ってくれた。Khan氏によると、AT&Tの予想ではコネクテッドデバイスの数は2020年までに500億台に達するという。

 携帯電話の新規契約数が横ばいである(人々は既に所有している)一方、コネクテッドカーの契約は著しい伸びを見せている。またAT&Tは、世界各地に複数のFoundry Innovation Centerを設置して、市場の成長と発展を支援しており、大手のエンタープライズサービスプロバイダーも創造的発想を追求する同様の研究所を設置するようになってきている。

 こういった動きすべてにおいて重要なのは、セキュアかつ存続可能なエンタープライズサービスを作り上げ、急激に増加しつつあるデータを適切なタイミングで適切な場所に送り届け、近代的なビジネスを展開していけるのは誰かを見極めることだ。このため、XaaSベンダーは、顧客から一番に声をかけてもらえるグローバルサプライヤーになろうと戦っているのだ。

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