システムインテグレーターは現在、クラウドの利用や大規模案件の減少、アジャイル開発の普及などにより、既存の人月のビジネスから岐路に立っている。何を提供し、どのようなビジネスモデルならこれからも多くの企業に必要とされる存在であり続けることができるのか。先進的な取り組みをしているSIerがこれまでの取り組みや展望を語る。今回は2回目。参加者は以下の5人。(第1回)
参加者
- NTTコミュニケーションズ エバンジェリスト 林雅之氏
- セゾン情報システムズ常務取締役 最高技術責任者(CTO)小野和俊氏
- クリエーションライン 代表 取締役社長、安田忠弘氏
- アイレット(クラウドパック) 執行役員 エバンジェリスト 後藤和貴氏
- アバナード ケイパビリティ・デベロップメント・ディレクター 和田玄氏
- 司会 ZDNet編集部 山田竜司
いまのSIビジネスに対する認識
いかに海外の先進事例を伝えるか
和田氏:アバナードはエンジニアの会社なので手を動かしてものをつくっています。しかし油断していると、どんどん一般的な、ジェネラルな方向に人が寄っていってしまう。ですから、あえてテクニカルに完全に寄ったMVP(Microsoft Most Valuable Professional)的な人や、プロジェクト管理に特化した人もある程度そろえています。そうしたバリエーションを担保することに注意して、人の管理・育成をやっています。
アバナード ケイパビリティ・デベロップメント・ディレクター 和田玄氏
エンジニアの管理は、ひと昔前のマイクロソフトのソリューションに比較的似ています。たとえばインフラでは、Share Pointのコラボレーションや大規模.NET(ドットネット)開発がありますが、今は顧客からのニーズがものすごく多様化しているので、それだけだとまったく担保できません。
そのためDevOpsなど業種の観点の製品やサービス、エンタープライズアーキテクチュアなど横断的なアーキテクチュア、クラウド戦略をリードする業務ごとの専門家によるコミュニティをつくり、そこに全社員が所属して学んでいます。それに加えて、3万人ほどいるグローバルなアバナードの従業員同士で情報交換もしています。当たり前ですけど、米国で使ってるAzureと日本で使ってるAzureはそれほど違いません。Windows Serverは英語版でも日本版でも変わらないので、そこでの情報交換は僕らにとってものすごく価値がある。
そうした活動を積み重ねながら、僕らは顧客に海外の先進的なデジタル、クラウドの使い方を教示することに取り組んでいます。クラウド、デジタルの使い方に関しては海外の方が進んでいます。われわれの海外ネットワークを使って、それをお顧客に示す。
例えばイタリアの銀行でやっているソリューションを日本の銀行に紹介すると「なるほど。うちだったらどうなのかな」というところから議論がスタートします。さらに、興味を持った顧客には「僕らはシステムのことはわかりますが、業務のことはみなさまのほうがお分かりですよね」と言う。そこで話を広げていき、「僕らが提供できる価値って何ですかね」と問いかけてビジネスにつなげています。