Hewlett Packard Enterprise(HPE)は11月29日、英ロンドンで欧州での年次イベント「HPE Discover London 2016」を開催。初日の基調講演では、HPEとMicrosoftの幹部がハイブリッドクラウドでの両社の提携の意義や今後の計画などを語った。
HPEは、2015年末のHPE Discover Londonでパブリッククラウドからの撤退を正式に発表した。撤退と同時に握手を交わしたのが盟友Microsoftだ。
Microsoftのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」をHPE顧客向けに推奨パブリッククラウドとし、Microsoftはハイブリッドクラウド向けのインフラでHPEを推奨パートナーにするというものだ。
具体的には、クラウド環境構築用サーバ規格である「Microsoft Cloud Platform System(CPS)」に対応したコンバージドシステム「HPE Hyper Converged 250 for Microsoft Cloud Platform System Standard(HC 250 CPS Standard)」を発表した。HPEはこの提携を「Cloud Platform Initiative」と呼んでおり、期間は3年となっている。
あれから1年、今回のHPE Discoverでは、Microsoftでクラウドとエンタープライズグループを率いるエグゼクティブバイスプレジデントのScott Guthrie氏が登場、これまでの経過と今後について話した。
(左から)Antonio Neri氏、Scott Guthrie氏
パブリッククラウドが注目されているが、パブリッククラウドの成長率が約20%であるのに対し、プライベードクラウドも約17%であり、これからはハイブリッドクラウドが重要になるとHPEは主張している。ここでは、HPEのサーバで構築するプライベートクラウド、あるいはデータセンターに対し、パブリッククラウドではAzureを始め、Amazon Web Services(AWS)などとの連携も図っている。
ステージに立ったHPE エンタープライズグループ エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャ、Antonio Neri氏が「MicrosoftとHPEはハイブリッドITという共通のビジョンを持っている。2社でこのビジョンを現実のものにする」と語れば、Guthrie氏も「自社のニーズにあわせてオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドを柔軟にミックスして実装できるべきだ」とHPEが掲げる“正しい組み合わせ(right mix)”を持ち上げた。
提携は複数の共同プロジェクトを含み、深く統合されたハイパーコンバージド、ハイブリッドクラウドソリューションを提供する。これにより、ユーザー企業がハイブリッドクラウド環境を実現できるよう支援する。
HC 250 CPSは、一貫性のあるサービス体験を提供するリファレンスアーキテクチャとなり、HPEの統合管理ソフトウェア「OneView」とMicrosoftの管理製品を統合し、OneViewのコンポーザブルAPIを活用できるとNeri氏はメリットを説明する。
「ハイブリッドクラウド環境はアプリケーションとツールのシームレスな拡張をサポートし、クラウド管理ツールとインフラ管理ツールの間を密に統合しなければならない。これによりITオペレーションのタスクを簡素化できる。ハイブリッド環境はセキュリティ、マネジビリティが必要だ」とGuthrie氏は説明した。
Guthrie氏は続けて「オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドの管理は複雑であり、連携できないツールがたくさんある。集合的に管理ができない」と現状を指摘し、自社のオンプレミスとクラウドのインフラ管理製品「Microsoft Operations Management Suite」の重要性をアピールした。
このような技術的課題に加えて、HPEのNeri氏は移行支援のニーズも取り上げた。「これまでのITからハイブリッドのITに移行するにあたり、スキルがないという声をいただく。HPEはセキュリティ、ID管理、災害復旧(DR)、ネットワーク管理を含むプロフェッショナルサービスを持ち、ハイブリッドITの実装を支援できる専門家を1000人以上有する」(Neri氏)