「世界初の本物のコンポーザブルインフラ」として、ハードウェア製品「HPE Synergy」を発表したHewlett Packard Enterprise(HPE)。コンピューティング、ストレージ、ネットワークを1つのシステムとして管理でき、企業は既存のIT、仮想、クラウドネイティブアプリケーションを管理できるというもの。
だが、コンポーザブルの先についても研究を進めている――「The Machine」だ。コンピューティングの構造から見直すことで、データの爆発的増加、スピード、消費電力、セキュリティなど現在業界が抱える課題を解決できるという。
コンポーザブルの究極系--ラボで進む「The Machine」プロジェクト
The MachineはHewlett Packard Labsで数年前からあった構想で、2014年6月のHP Discoverイベントで正式に研究プロジェクトとして発表した。現在、同Labが最も力を注いでいるプロジェクトだ。
12月2日、英ロンドンでHPEが開催した「HPE Discover London 2015」の基調講演で、HPEの最高技術責任者(CTO)兼Hewlett Packard Labsのディレクターを務めるMartin Fink氏がThe Machineのコンセプトと目標、現状などについて話をした。
HPEの最高技術責任者(CTO)兼Hewlett Packard Labsのディレクター Martin Fink氏
現在のコンピューターが直面する課題はデータの増加、消費電力の増加、スピード、セキュリティなどさまざまだ。データひとつとっても、IoTにより指数関数的な増加が予想されている。
それだけでなく、これらのデータをリアルタイムにインテリジェンスに変えるという速度面での需要が高まっている。電力については、世界中のパブリッククラウド向けデータセンターが消費する電力量は国にして世界第5番目。日本(6番目)を追い越している。
HPEなど主要ベンダーが進めるコンポーザブルは部分的にこれらの問題の緩和を図るもので、HPEは12月初旬に開催したHPE Discover中に初のコンポーザブルインフラハードウェア「HPE Synergy」を発表した。
プロセッサからメモリが中心に
The Machineはこれをさらに進める取り組みだ。「The Machineと土台の技術は、”トランスフォーム(変革)”を革命的に進める」とFink氏。キーワードは「パワフル」「オープン」「セキュリティ」「シンプル」で、この日のスピーチでは、構造からみた特徴として「メモリ主導」「フォトニクス」を取り上げた。
現在のコンピューターはプロセッサがメモリの量を決定しており、これに合わせてデータを”チョップ”する――つまりプロセッサが”門番”になっており、メモリをスケールしたいときはプロセッサを加えるというものだ。
The Machineはこれをひっくり返して、データを中心に据える。現在のメモリ構造を壊してメモリとストレージで”ユニバーサルメモリ”を作り、データを保存したり操作したりする。スケールアップとスケールアウトが同時に可能となり、「現在では考えられないような規模のデータセットを取り扱える」とFink氏。プロセッサはシステムが消費する電力の多くを占めており、汎用からタスク主導のSoCになることで性能を改善し、消費電力を抑えることができる。
データのやりとりをつかさどるのが光(フォトニクス)技術だ。これまでの銅線で指摘されてきた消費電力や帯域のスケールを飛躍的に改善できる。Fink氏は触れなかったが、最終的には「Memristors(メモリスタ)」の利用が想定されている。DRAMのスピードにフラッシュメモリとハードドライブのコストを組み合わせた次世代の不揮発性メモリといわれるものだ。
現在のプロセッサ主導のコンピューティング
インメモリデータストレージ、SoCなどの技術によりユニバーサルメモリを土台としたメモリ主導を実現するという
HP Labsでは現在、The Machineのコンポーネントと技術の開発を進めている。OSは現在、Linuxをベースとした「Linux for The Machine」を利用している。Fink氏はハイブリッドインフラへの変革に向けて、OS側で「ContainerOS」として取り組みを進めていることも明らかにした。
「コンテナはセキュリティと隔離、そして拡張性のある管理の問題が指摘されている」と述べ、HPEはこの問題を解決すると続けた。
コンテナのセキュリティを実現するという「ContainerOS」。HP Labで開発中のようだが、詳細は明かされなかった。