Bluemixの歩き方

第1回:Bluemixの特徴と価値--ハイブリッドでオープンなアーキテクチャの意味 - (page 2)

平山毅 (日本IBM)

2017-01-16 12:00

Bluemixの必要性

 さて、インフラを自動拡張させるだけなら、IaaSでも十分です。なぜ、PaaSが求められるのでしょうか。理由は、自動拡張縮小しても動作と制御の両方を行うアプリケーションをいちから開発するのが比較的難易度が高いためです。

 典型的なウェブ3層のアプリケーションの例であれば、負荷をウェブサーバに適切に分散するためには、ロードバランサの高度な振り分け設定とロードバランサ自体の拡張性の考慮も必要です。アプリケーションサーバは、ロジックが入るため、処理の並列制御も必要ですし、拡張させる場合に最新のアプリケーションをどうデプロイするか、という考慮事項も発生します。

 前後のウェブサーバ、データベースサーバが自在に拡張縮小するため、IPアドレスによるアクセスも現実的ではありませんし、障害時対処も複雑性を増します。

 データベースの拡張、縮小の対応は最も難しい類です。バッチアプリケーションであれば、コスト対スループットを最適化する並列チューニングする際も考慮事項が増えます。つまり、IaaSでクラウドネイティブアプリケーションを実現するのには、非常に難易度が高く、クラウド技術に強いエンジニアが必要になってしまうのです。

 PaaSを利用すれば、これらの複雑な部分を全てクラウド側で担ってくれます。生産性と運用性の両面で、アプリケーション開発者視点から見れば、PaaSに慣れれば当然ながらPaaSを使うでしょう。クラウドインフラのメリットを最大限に活用するためには、PaaSで実現できるものはPaaSを使いこなすべきとも言えます。

 そのため、メガクラウドは拡張性の高いIaaSを提供し、競合間で過酷な価格競争を行いつつも、差別化要素としてPaaSの利便性に最大の開発リソースを投入しているのです。

図1-3:PaaSへの実行環境を減らす
図1-3:PaaSへの実行環境を減らす

Bluemixの特徴

 メガクラウドでもすでにPaaSを提供しています。Bluemixの他社と違う特徴は何になるのでしょか。1つ目は、Bluemixがもともと開発者をターゲットにしたPaaSからスタートしたという点です。したがって、アプリケーション開発とサービスを部品のようにつなぎ合わせて、コンソーラブルに開発することができます。

 IBMはBluemixの開発でデザインシンキングの考え方を取り入れており、人間が最もイメージしやすく、分かりやすいコンポーネントの配置に考慮しているため、この使い勝手、開発生産性もBluemixの大きな特徴です。具体的にどのようにクラウドネイティブアプリケーションをマイクロサービスの考えを踏襲して構成していくかは今後、段階的に紹介することにします。

 2つ目は提供形態、提供内容で、こちらも大きな特徴があり、まとめると以下の3つとなります。順番に見ていきましょう。

  1. ハイブリッドアーキテクチャv
  2. オープンアーキテクチャ
  3. デジタルイノベーション

ハイブリッドアーキテクチャ

 Bluemixは他のメガクラウドと同様に、PaaSをパブリッククラウドとして提供しています。ただし、Bluemixは、パブリックは1つの提供形態でしかありません。パブリックのメリットはやはり、その手軽さとオンデマンドな安さでしょう。

 しかしながら、パブリックは、マルチテナントでインターネット経由のアクセスになるため、セキュリティや運用の面で重要度が高いシステムにおいては考慮事項があります。

 そこで、BluemixにはBluemix DedicatedとBluemix Localという提供モデルも用意してあります。Bluemix Dedicatedとは、Bluemix Infrastructureのデータセンターに契約者の専有PaaSをシングルテナントで提供するモデルです。そして、Bluemix Localは、PureApplicationアプライアンスとあわせてオンプレミス環境に契約者の専有PaaSをシングルテナントで提供するモデルです。

 この3つの提供形態を同じBluemixアーキテクチャで提供していることが1つ目の強みで、DedicatedとLocalの2つではバージョンやメンテナンス運用を調整することもできます。ただし、Bluemixのサービスは非常に豊富にあるため、一部サービスについては、DedicatedやLocalで対応していないケースもありますので、マニュアルや営業に確認するようにしてください。

 また、Bluemixというクラウドプラットフォーム自体のハイブリッドな互換性だけではなく、既存のオンプレミス資産とシームレスに連携するためのハイブリッドソリューションも提供しています。具体的には、APIやDataLakeで紹介します。

図1-4:ハイブリッドアーキテクチャ
図1-4:ハイブリッドアーキテクチャ

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