「アナリティクスと機械学習は、効率性向上のためにもっとも重要なコンポーネントだ。IoTはデータレベルで業界間、サイロ間のやりとりを可能にする。CIOは、データは究極的にはプラットフォームに依存しておらず、現在ではデータサイエンスもサービスとして利用できるようになっていることを念頭に置く必要がある」(Hugues氏)
ベンチャー育成企業Blenheim Chalcot Accelerateのグループ技術責任者であるMark Ridley氏は、アナリティクスの普及が進んでいることを重視している。Ridley氏によれば、予測的アナリティクスと機械学習は、以前からITにとって重要なツールだったが、従来と違ってきているのは、専門家でなくても利用でき、しかもツールをクラウド経由で導入できるようになっていることだという。
「データサイエンティストにとってのDatabricksやMicrosoftの『Azure Machine Learning Studio』などの使いやすい製品は、20年前の開発者やデザイナーにとってのウェブのようなものだ」と同氏は言う。「これらの機能は、私がreed.co.ukでテクノロジ担当ディレクターを務めていた際には、データサイエンスチームの編成を簡単にしてくれた。これは、スタッフが使うツールや、必要なサポートを簡単に調達できたからだ」(Ridley氏)
Ridley氏は、同氏の現在の役職や、他の企業などでも同様のメリットが得られると予想している。「これらの新しいプラットフォームは利用しやすくアクセスしやすいため、企業はターゲットとする顧客の絞り方や、セールスの際の話題の選び方、製品に対して最高のサポートを提供する方法、業績を予想する方法などを理解するための、これまでにないチャンスが得られる」と同氏は言う。
IoTの利用事例
Ridley氏はIoTが今後成長することを確信しているが、すでにその兆候は現れつつある。IDCによれば、IoTにもっとも多くの投資を行っている産業は製造業と運送業であり、2016年の投資額はそれぞれ1780億ドルと780億ドルに達したと述べている。それに次ぐのは水道や電気などの公益事業で、690億ドルが投資されている。公的部門も大きく発展している分野の1つで、多くのプロジェクトで実質的なメリットが生み出されている。
アイルランドの公的機関Health Service ExecutiveのCIOを務めるRichard Corbridge氏によれば、医療アナリティクスはすでに専門家でなくても利用できるようになっているという。同氏はウェアラブルデバイスやヘルスケアアプリが広く普及していることに触れている。こういった進歩は、医療関係者でなくても、自分が所有している技術を使って、複雑な医療情報を理解できる可能性があることを意味している。
「われわれは医療の次のフロンティアに到達しつつある。患者は、自分のデバイスを使って情報にアクセスし、健康や幸福な生活を実現するための活動を、競争の要素を含むゲーム化されたプロセスに変えることができる」(Corbridge氏)
IoTの恩恵は、防災活動にも及んでいる。英国ハンプシャー州消防局のICT部門責任者であるNeil Moore氏は、英国では前年比の火災件数が減少し続けているが、これは火災警報器や煙検知器などの技術が導入されたこととある程度関連している可能性があると述べている。IoTの新たな展開によって、状況はさらに改善されるかもしれない。