古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

Dockerを使ったIT基盤構築 - (page 2)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2017-03-02 07:00

 では、構築手順書やノウハウの共有だけでなく、ITシステムの構築作業自体の工数削減はできないのでしょうか?そこで登場するのが、Dockerです。

 Dockerでは、OS、ミドルウェア、アプリケーションなどの一連の構築作業を自動化する仕組みが備わっています。では、Dockerが提供する構築作業の自動化とは、どのようなものなのでしょうか。そこには、思いもよらない発想があります。Docker社のメンバーがたどり着いた答えは、「人間が目視で確認しながら手動で作業を行うための構築手順書をなくしてしまおう」という新たな発想です。

 構築手順書をなくしてしまうとは、一体どういうことなのでしょうか。Dockerには、人間が目視で確認しながら実施する手動の作業を極力減らそうという考え方があります。そして、構築手順書ではなく、とある文法にのっとった書式で構築手順をコード化し、そのコードをDockerエンジンに読み込ませることで、構築作業自体を自動化してしまうのです。

 具体的には、Dockerfileというテキストファイルにコードを記述します。IT部門の運用担当者は、Dockerfileを記述し、Dockerエンジンに読み込ませることで、構築作業自体を自動化することができます。Dockerエンジンは、Dockerfile特有の文法に基づいて、OSとアプリケーションが含まれたDockerイメージを作成します。このアプリケーション入りのOS環境を含んだDockerイメージを作成することを「ビルド」といいます。

 一旦、Dockerイメージがビルドできれば、そのイメージからコンテナをすぐに起動できます。また、ビルドした独自のDockerイメージを他のシステムにコピーし、そのまま稼働させることも可能ですので、ITシステム全体の可搬性も高まります。このような可搬性の向上や、ユーザー用のOS環境やアプリケーション配備手順をコード化することによる自動化は、IT基盤構築の工数削減に大きく寄与します。

システム構築手順をDockerfileでコード化
システム構築手順をDockerfileでコード化

Dockerfileがもたらすメリット

 IT部門の基盤運用担当者と開発部門の開発者にとって、Dockerfileによる自動化の仕組みのメリットを考えてみましょう。まず、IT部門の基盤運用担当者は、事前に入手したひな形のDockerイメージ、または、独自にビルドしておいたDockerイメージからDockerコンテナをすぐに起動し、開発部門やエンドユーザーなどにOS環境やサービスを提供することができます。

 非常に多くのひな形が公開されており、アプリケーションがすでに組み込まれたDockerイメージを入手できるため、アプリケーション配備の手間を削減できます。OS環境にウェブサービスを追加する、検索システム追加するといった「新たな業務サービスの追加要求」があったとしても、業務サービスのアプリケーションの追加手順をDockerfileに記述し、Dockerイメージを新たにビルドすれば、新しいサービスをDockerコンテナとして提供することができます。

IT部門の基盤運用担当者にとってのメリット
IT部門の基盤運用担当者にとってのメリット

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