基幹システムのクラウド化をSAPはどう見ているか

國谷武史 (編集部)

2017-03-02 18:05

 SAPジャパンは3月2日、2016年の事業動向と2017年の戦略に関する説明会を開催した。2016年はクラウドの新規受注の売上が大幅伸長し、グローバルの31%増に対して日本は139%増だった。


記者会見するSAPジャパンの福田譲社長

 2016年の総売上は、グローバルが前年比7%増の220億6700万ユーロ、日本が同10%増の8億2500万ユーロだった。ソフトウェアライセンスの売上はグローバルが1%増、日本が14%、ソフトウェアライセンスおよび保守サポートの売上はグローバルが4%増、日本が4%増だった。

 このうち14%増となったソフトウェアライセンスについては、従来のオンプレミス環境やIaaS上などに構築したシステムなど、ユーザーがさまざまな形態で利用している。ただ福田譲社長は、「約90%がクラウド環境で利用していると想定している。基幹システムの移行は中長期的な視点で検討するため、サブスクリプションよりソフトウェアライセンスの方にメリットを感じているのではないか」と話し、基幹システムのクラウド化が順調に進んでいると見方を示す。

 また福田氏は、2010年にBill McDermott最高経営責任者(CEO)による経営体制となって以降の変化を表す目的で、2009年と2016年の売上や利益の比較を紹介。クラウドの売上は30倍以上に、総売上は2倍以上にそれぞれ増加し、「当然ながら2009年時点のクラウドビジネスは小さいが着実に成長している」(福田氏)と、クラウド化を推進する同社の戦略が正しいものであるとした。

 短期の業績見通しでは、クラウドサービスのサブスクリプション売上が2016年実績の29.9億ユーロに対し、2017年は38億~40億ユーロ、2020年は80~85億ユーロに達すると予想する。福田氏は、「2017年~2018年にクラウド関連の売上が中心になると見込んでいるが、順調に進んでおり、若干上方修正している」と話した。


売上の中心がクラウド関連へ一気にシフトする予想する

ビジネス変革を促す施策

 福田氏は、2016年から2017年に続く重点施策に「デジタル変革」「ビジネスモデルの革新」を促す取り組みを挙げる。

 これはITの利用が既存のビジネスを支えるためだけではなく、「ビジネスを変え、新たな価値を生み出すためにあるべき」という同氏の方針によるもの。デザインシンキングの手法を用いてビジネスアイデアを創出したり、課題解決の視点からユーザー企業と新規の製品を共同で開発したりするケースが広まっているとした。

 例えば、後者のケースではNTTグループや京福バス(福井県)との共同実証から開発したソリューションがあり、バスの運転手が身に着ける「Hitoe」(東レ製)のセンサで検知した心拍数データや車両のドライブデータなどをSAP HANA Cloud Platformに集約・分析し、安全かつ効率的な運行につなげる。SAPではこうした施策を「SAP Leonard」と呼び、最終的に業界別ソリューションなどの形で展開している。


NTTグループらとの共同実証で利用した「Hitoe」

 製品面では引き続きS/4 HANAを中心に、大企業の基幹システムのクラウド化と中堅・中小企業へのERPパッケージの導入促進を図る。また、2020年を目標年次とする中期計画の一環でサービス部門を100人態勢に拡充する。


S/4 HANAは顧客に合わせてオンプレミスでもクラウドでも利用できる

SAPジャパンが把握する限りでは国内最速、最小コストでのERP導入事例

 最後に福田氏は、「攻めのITと叫ばれて久しいが、基幹システムなど守るべきITと両軸で取り組まなければ企業の変革は難しい。2017年も変化の実現を支援していく」と述べた。

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