「AICSは入り口。自分の体内にリスクがあるかどうかを測定し、(内視鏡など)次の検診につなげてもらいたい」と安東氏。医師側も、AICSのリスク評価を把握して検査をするのと、なしで検査するのとでは違いが出そうだ。
AICSは2011年4月にサービスを開始したが、味の素はここで提携戦略をとっているのも興味深い。AICSは販売で受託臨床検査のエスアールエル(SRL)と提携し、同社が受託してアミノ酸を分析し、味の素では解析センターでSRLが測定したアミノ酸データの解析のみを行うというモデルを構築している。「これまでは食品など”モノ”を売ってきたが、AICSでは技術、情報を売ることになる。これまでの業態とは異なる」と安東氏。
一橋大学イノベーション研究センターの准教授、清水洋氏は、アミノインデックスを紹介した「一橋ビジネスレビュー」で、「エスアールエルが担当しているアミノ酸の測定は味の素の経営資源で行うこともできたかもしれないが、味の素リスクの計算に焦点をあわせている」と分析、これによりAICSを固定費が小さく損益分岐点が低いビジネスにすることができた、と評価している。
AICS検査の流れ
AICSは登場から6年近く、すでに全国1200以上の医療機関で受けられる。AICSのさらなる普及とともに、安東氏らは今後、生活習慣病にも拡大することを狙っている。がんの場合はリスク評価のみで終わるが、生活習慣病ならばアミノ酸、食品の販売にプラスになる可能性がある、と考えるからだ。
アミノ酸という中核から生まれた事業が今度どのように展開するのか、ビジネスの面からも興味深い事例となりそうだ。
体内のアミノ酸から数年後にメタボリックシンドロームになる確率を見るような研究も進んでいるという。