槇氏:似たような話なのですが、IT部門も昔は縦割りの組織でした。生産のIT、販売のIT、サプライチェーンのIT、会計のITなどです。これらが統合基幹業務システム(ERP)の登場で統合に向かい、IT部門は横串であるべきだとなりました。しかし、IT部門はシステム統合には注力したものの、集約したデータの中身までは踏み込んで見てこなかったという実情があります。
アクセンチュア株式会社 デジタルコンサルティング本部 マネジング・ディレクター 槇隆広 氏
IT部門はデータの定義(メタデータ)は把握していますが、データ自身は深く理解していないことが多いです。私が以前BIの導入をしていた際によく言っていたのが、IT部門、つまり「情報システム部門」という名称があるものの、実際はデータ自身を把握していないので、「情報システム部門」ではなく、実際は「システム部門」ですねということです。
また、先ほど、IT以外の部門でミニITチームを自部門に持ってしまおうとなることがあるという話をしました。IT部門は5年ごとにシステム更改をしています。
これが5年に一回だけであればいいのですが、システムを別々のタイミングで作っているため、あるシステムの更改が終わったら次は別のシステムというように、毎年何らかのシステム更改をやっています。IT部門はこのサイクルから脱しないといけないと思います。
しかし現実的にはこのサイクルはなかなか変えることができないため、マーケティング部門内にITチームを持ってしまう企業も増えています。最初の話に戻るのですが、だから最高マーケティング責任者(CMO)側にIT投資の予算がシフトしてしまうのです。
中東氏:データやテクノロジは別に情シスの資産ではなく、会社の目的や資産なので「やれるところからやる」というだけの気がしますが。
先進的な最高情報システム責任者(CIO)がいる会社ですと、そもそも5年周期でこんなことをやっていてはダメということで、「経営の目的に対してどう貢献しよう」とか。
マーケティングや売り上げのためにどう貢献をしようかとか。どう人を出して、チームを作っていこうとか。他部門に意見を聞き、IT投資に反映させていくということをしていますね。
尾花氏:システム上にある業務領域が、どんどん広がっていますね。人事でも勤怠管理と給与計算だけだったところがタレントマネジメントが入るといった意味で、今までデジタル化されていなかったからシステムが要らなかったという領域の業務が、新しいシステム領域に変わってきました。
また、基幹系で求められるIT部門の仕事は、止めてはいけないことです。落ちないことが前提で、落とさないように頑張っているのに、少しでも落ちたらすごく怒られるという評価のされ方です。正直に言うと、営業やマーケティングのシステムは、少しくらい落としてもかまわない領域なわけです。
新しい事業領域がテクノロジに乗ってくるとなると、やはり情シス部門が面倒をみなければならない。業務時間外でIT部門の人と話をすると、「わかっているけど、それで評価はされない」という話になってしまう。本当は一週間でできる。でも、部門の中で決まっている手続きを踏むと、どうしても1カ月かかってしまう。そういうところを本当に会社ぐるみで組織を超えて理解していかない限りは、マーケティング部が本当にやりたいことはできないのだろうなと思います。
<第5回へ続く>