座談会@ZDNet

「成果しか売れない時代」の前にできること--B2Bマーケティング座談会(6) - (page 4)

山田竜司 (編集部) 吉澤亨史

2017-06-02 07:00

サービスデザインとエクスペリエンスデザインの違い

 飯室氏:UXなどエクスペリエンスの機能や人は今の製造業には多分存在しないと思っていて、サービス系の会社から人を呼ぶのでしょう。昔からある「サービスサイエンス」という地味な学会などを見ると、やっていることはまともです。学ぶことがすごくたくさんあって、UXの書籍を読むならサービスの本を読む方がよほどいいと思っています。

 槇氏:アクセンチュアとしては、グローバル全体で「サービスデザイン」に注力しています。日本ではまだサービスデザインを実践しようとしている企業が限られるため、いつサービスデザインを日本で本格展開するか悩んでいます。エクスペリエンスデザインとサービスデザインの違いについては、間違った解釈をされていることがあります。典型的なエクスペリエンスデザインは、ペルソナを定義し、カスタマージャーニーを作って顧客体験を描き、新規導入や改善が必要なサービスを定義し、それらに優先順位をつけて実現していきましょうというものです。

 一方、サービスデザインは事業構想企画に似ています。顧客体験を起点にするところはエクスペリエンスデザインと似ている部分もありますが、サービスデザインでは、対象者を定義して問題識別し、その解決にあたってどのような価値を提供するか、デザインとプロトタイピングによる検証を繰り返しながらサービスが機能しているか評価します。

 また、注目を浴びる面白いサービスを作ればよいというわけではありません。イベント的な打ち上げ花火にせず、サービスを事業として継続するために、運営モデル、ファイナンスモデルや継続的なサービスの洗練化についても考える必要があります。

 何をインハウスでまかない、どの部分を外部から調達し、サービス開発・展開のスピード感はどの程度で、どのようなルールやプロセスで運営していこう、というように、さまざまな要素を検討する必要があります。

 また、個々の製品やサービスの評価において、KGI/KPIを定義して成功度合を測定し、いつまでに一定の成果が出なかったらやめてしまおうということも考える必要があります。

 飯室氏:ただ、顧客体験というけれど定義されてはいないから、そこがみんなわからなくて、いいコンテンツを提供すればいいとか、いい製品を提供すればいい、いいサービスを提供すればいいということになります。実際は顧客の期待を超えればいいだけの話なのですよね。

 槇氏:必ずしも全てにおいて期待を超える必要はなく、期待を満たせばいい場合もありますね。

 飯室氏:そう、期待に合えばいい。期待に沿っていて、少しでもよければもう一度行くし、期待よりも少しでも下だったらダメと言われてしまう。だから事前の期待をコントロールする。聞いた話ですが、あるユーザーがコールセンターに電話したときに「立て込んでいるので少々お待ちください」と一言あるのとないのとでは、その客が怒るか黙って待てるかという違いが出る。昔からのサービスやホテル会社にはサービスデザインのものすごく細かいマニュアルがあり、そちらは完成しているのですよね。

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