「OpenStack Summit」は毎年2回開催されているが、今回は「今は、変曲点に差し掛かっている。…われわれは第2世代のクラウドへと移行しつつある」という、OpenStack FoundationのエグゼクティブディレクターJonathan Bryce氏が行った基調講演の発言から始まった。その流れを先導しているのがOpenStackだ。
世代とは何を指すのだろうか。第1世代のクラウドは、未成熟な技術の上に構築され、優れたアーキテクトやエンジニア、開発者を必要とした。これを実装できたのは、eBayや米Yahooなどの大規模なテクノロジ企業だけだった。第2世代では、技術が簡単になり、小規模なチームでも開発や管理が可能になったため、比較的小規模な企業でもコスト削減を実現できるようになった。
具体的に言えば、OpenStackのデプロイメント数は前年比で44%増加した。OpenStackは現在、世界で500万以上のコンピュートコアで実行されている。
なぜこれが実現したのだろうか。Brocadeの戦略的アライアンス責任者であるMark Presti氏は、「結局のところOpenStackは、ほかのオープンソースプロジェクトと比べて、どれよりも早いペースで加速し、規模を拡大し、成熟したということだ」と説明している。
OpenStackが普及したもう1つの理由は、データセンター以外でも使われているということだ。最近では、OpenStackはエッジコンピューティングの重要な要素になりつつある。例えば、Bryce氏は「OpenStackはこれまでパブリッククラウドが扱ってこなかった分野に進出した。IPv6のアドレッシングとNFV(Network Function Virtualization)を早い段階で採用したことで、OpenStackは通信事業者御用達のテクノロジになった」と述べている。
さらに同氏は、「AT&Tだけでも、すでに100以上のデータセンターでOpenStackを利用する顧客をサポートしており、Verizon、China Mobile、Deutsche Telekomなどのキャリアでも同様の状況になっている。純粋なフットプリントの面で言えば、OpenStackはもっとも普及した仮想ネットワーク用のクラウドインフラであり、最近のVodafoneの契約にもそれが端的に表れている」と付け加えた。
Verizonの有名な技術者であるBeth Cohen氏は、基調講演でこの点を強調した。Cohen氏は、VerizonではOpenStackを使うことで米国人口の98%を4G LTEでカバーすることが可能になり、同社のインターネットを6つの大陸に広げることができていると説明している。
「OpenStackはもはやデータセンターだけで使われるものではない。顧客はネットワークサービスのセキュリティを求めており、OpenStackの標準化された管理ツールとオープンなアプリケーションインターフェース(API)は、レガシー環境の上で、仮想ネットワークサービスを素早く簡単に構築することを可能にした」と同氏は述べている。これによって、Verizonやその他の競合通信事業者は、導入やメンテナンスのコストを大幅に削減することができた。
また企業では、OpenStackのプライベートクラウドは、パブリッククラウド以上に経費節減につながると認識されている。例えばオンライン小売業者のSnapdealでは、OpenStackクラウドに移行したことで経費が75%削減されたという。プライベートクラウドが進歩したことも、これを後押ししている。確かに、一般的な用途については「Amazon Web Services」(AWS)のような大規模なIaaSクラウドを使うことでもIT経費を削減できるが、クラウドをカスタマイズすることでさらにコストを下げたければ、OpenStackの方が優っている。