「真の量子コンピュータ」実現への道--スパコンを超える理由 - (page 3)

大関真之

2017-06-23 07:00

 「これまでは量子コンピュータの理論が先行していたけれど、実験技術が進展してやっと歴史が始まったという感じでしょうか。(1830~40年代にコンピュータを構想した)チャールズ・バベッジの解析機関の時代は超えたと思いたいし、一方で、(古典的なコンピュータである)ENIACやEDVACほどのご利益があるデータを返してくれるほどの活躍はしていない。いまD-waveやGoogle、IBMが活用している超伝導を用いた量子ビットは、昔のコンピュータで言うところのトランジスタなのかもしれない。さらに研究が進めば、Microsoftが追い求めるようなこれまでにない量子ビットの実現技術として注目される(高い雑音耐性がある)『トポロジカル量子ビット』が実現するかもしれません。ここ数年の進展は目をみはるものであり、これから量子コンピュータの発展は目を離せないものになるでしょう」(藤井氏)

 藤井氏と量子コンピュータの開発の現状について談義して、この原稿をまとめていたところ、今度はMITから3次元的に集積可能な超伝導量子ビットに関する論文が公表された。

 次から次へと大規模な量子コンピュータに向けたアイデアが飛び出して実現している。

 われわれはそんなうごめく時代の真っ只中にいるのだ。

 前回紹介したように、量子アニーリングを中心とした世界各国の量子コンピュータの開発競争が繰り広げられる国際会議「Adiabatic Quantum Computing Conference (AQC2017)」が6月26日より東京リクルート本社で開催される。

 多くの参加者が参加申込みをしたため、すでに会場のキャパシティを超えるほどである。

 その大きな反響を受けて、会議の様子を配信することが決定された。日本で繰り広げられる世界最前線の研究成果を目の当たりにすることのできるチャンスだ。

 時代が変わる1ページが開かれる時、その瞬間を読者の皆さんものぞいてみよう。

大関 真之(おおぜき まさゆき) 東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻准教授
博士(理学)。京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻助教を経て現職。専門分野は物理学、特に統計力学と量子力学、そして機械学習。2016年より現職。独自の視点で機械学習のユニークな利用法や量子アニーリング形式を始めとする新規計算技術の研究に従事。分かりやすい講演と語り口に定評があり、科学技術を独特の表現で世に伝える。

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