一方、ロンドンでは米国とは少し違う位置づけがありました。そのシリコンバレーからの流れによってAmazonやGoogleなどが金融サービスを始めたら、自分たちの仕事はどうなるのかという危機感があったのです。
金融機関とスタートアップ、日本の金融庁にあたる機関が、官民一体となり、ロンドンを世界のFinTechハブにする取り組みを始めたのです。それが2013年くらいのことで、ロンドンは2〜3年で急成長しました。
日本も始まりは遅くなかったのですが、シンガポールが予算をかけて金融管理庁(MAS)主導でスタートし、プロモーションも優れていたため、シンガポールに比べると遅れて見えると感じています。
--それでも、スタートアップメンバーから“卒業”したAlpacaは三菱UFJフィナンシャルグループの出資を受け、FINOLABはこの2月からみずほ銀行と提携しています。成功事例が次々出ているように見えるのですが、それはなぜでしょうか。
当初、われわれのプロジェクトは本当に共感を得られていませんでした。FiBCにもあまり予算がなく、イベント当日の運営スタッフは、ISIDの従業員ボランティアを含めた30〜40人で運営していました。
また、社外に関しては、FINOVATORSを中心とした、「FinTechのエコシステムを日本に作りたい」という人たちの協力を受けてやってきました。
予算をかけられないからこそ、ビジョンに共感し、ボランティアで働いてもらえる本気の人だけが集まったことが一番のポイントです。
日本に限らず、世界中のFinTech領域で働いている人の間に組織対組織ではない、協力関係が生まれています。おそらく、協力してもらっているイノベーターと言われる人たちには過去に起業をしたり、新規事業を立ち上げた経験とプロフェッショナルなバックグラウンドがあります。
イノベーターは、新しいことを始める時には、市場が成熟するまで、クローズにしても良いことがないと認識されているのでしょう。
十分に市場が大きくなってから、正々堂々と戦うべきだと考えているのだと思います。

FINOLABの様子