FinTechの実際

“バブル”が生み出した、骨太国産FinTechの台頭

小川久範

2017-03-29 07:15

 3月3日にFIBC(Financial Innovation Business Conference)2017が開催された。FIBCは2012年にスタートし、今年で6回目を迎える国内最大規模のFinTechイベントである。同イベントで行われるベンチャー企業によるピッチコンテストの審査は、2016年から金融革新同友会FINOVATORS(フィノベーターズ)が担当しており、筆者もその一員として今年も審査に参加した。レベルの高いベンチャーばかりで審査は難航を極めたが、終わってみれば高い技術力を持ち、世の中の課題解決に貢献する骨太なベンチャーが受賞し、妥当な結果になったのではないかと思われる。今回は受賞企業の印象を踏まえて、彼らが台頭してきた背景を考察したい。

国内外からFinTechが集結

 FIBCは2016年から公用語が英語となり、海外のFinTechベンチャーが参加するようになった。今年は14社の国内企業と15社の海外企業が登壇した。オーディエンスの大半は日本人だが、国内企業も英語で紹介しなければならない。英語があまり得意ではない登壇者にとっては、準備も含めかなり負担が大きいと思う。それでも英語を公用語としたのは、日本のFinTechエコシステムが海外から孤立することなく、グローバルFinTechエコシステムの一部として機能することを目指しているからである。そうなることで、海外のFinTechベンチャーによる国内進出や、海外のベンチャーキャピタルによる国内企業へ投資を促し、国内のFinTech発展に貢献してもらう。一方、国内のFinTechベンチャーは、海外へ飛躍する際の足掛かりを得ることができる。

 グローバルなFinTechエコシステムを意識した取り組みは、海外のFinTechベンチャーには概ね好評であった。オーディエンスは基本的に英語を理解しているので、登壇企業は出展ブースにおいて、英語で意味のある商談ができたことを喜んでいた。また、FIBCの前日にFINOLABで開催されたメンタリングも好評の一因である。これは、FIBCの主催者である電通国際情報サービス(ISID)が、FINOLABの運営も担っていることから実現した。FINOLABとは、三菱地所、電通、ISIDの3社が東京・大手町で運営するFinTechアクセラレーターである。メンタリングでは、FINOLABに入居する大手企業とFINOVATORSがメンターとなり、登壇企業に対して1社当たり30分間のアドバイスを行った。特に国内の事情に明るくない海外企業にとっては、日本への進出を検討する上で有意義なものであったと思われる。

 一方、国内のFinTechベンチャーにとっては、英語でプレゼンテーションを行う意味を十分に見出せているところは少ないのではないだろうか。海外からの登壇企業は、日本への進出を考えるステージにある、比較的完成度が高いベンチャーが多いのに対し、国内企業はそれよりも成長ステージが前の段階で、FIBCをきっかけに国内での事業を加速させようというところが多い。海外への事業展開がまだ先の話であるのなら、FinTechベンチャーに投資するベンチャーキャピタルを海外から招待することができれば、国内企業にとって更に魅力的なイベントになると思われる。

 なお、FIBCではピッチの様子を録画し、YouTubeで世界に向けて発信している。国内のベンチャー企業に関する英語の情報が増えれば、その魅力や優秀さが海外に伝わり、それに投資しようという海外の投資家や、買収を希望する海外企業の増加が予想される。それらが日本のFinTechエコシステムに組み込まれることで、国内FinTechベンチャーの成長やEXITに寄与すると期待される。


FIBC(Financial Innovation Business Conference)(ウェブサイトから引用)

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