ハードウェアについても若い家族が紅米などのローエンドスマートフォンを親にプレゼントしたのだろう。ただ筆者の利用経験でいうと、ニュースを読み、動画を見て、街中のQRコードを読みとり、電子決済をし、シェアサイクルを利用し、時に出前を取ろうものなら、低価格機種ではスペック的に不足する。
そんなに老人は必要はないと思うかもしれないが、老人の間で旅行が普及していく中、大都市においては観光地でのチケット購入にQRコードでの電子決済が進んでいるし、長距離の移動でも電子決済がないと不便だ。こうした状況で新たに老人向けのアプリを入れることは難しい。
急いで行動する若者に比べれば老人はのんびりしているが、それでも思うように動かないというのは本人たちにとってもどかしいだろう。そこそこのスマートフォンを買い与えられない限り、中国のさまざまなサービスを享受することは難しい。そこにさらに新しいアプリを興味本位で入れるのは難しい。根本的な家族の生活習慣が変わらない限り、老人主体のITトレンドは発生しない。
もうしばらくは中国の老人には優しくないIT利用環境は継続されることから、新しい老人向けサービスがヒットすることはないのではなかろうか。
- 山谷剛史(やまやたけし)
- フリーランスライター
- 2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。