--今、特に力を入れている取り組みはありますか。
「特定研究成果活用支援事業」のため、国からの出資がなされ、国立大学法人法の改正も行われました(前編参照)。この取り組みをきちんとやりきるのが国や納税者からの期待に応えることですし、そのための体制整備を推進していかなければなりません。
また、学内の東京大学アントレプレナープラザを核とするインキュベーション施設の満員状態が続いているため、拡充する計画があります。2018年4月から新たなスペースが稼働できる予定です。
MITやハーバード大学近くの主要通り沿いには、米国の巨大製薬企業がスポンサーとなった、バイオベンチャー企業用のインキュベーション(起業支援)施設が整備されてきました。
産業界がこぞって資金を出して将来のベンチャーを育てていこうとするもので、こういうモデルが日本にあってもいいと考えています。
--教育面では何に注力していますか。
強化したいのが、東京大学の学生がテクノロジ領域でチャレンジする「本郷テックガレージ」での取り組みです。ビジネスプランではなくて「モノ」を作るというのが特徴で、長期休みに活動資金を渡してプロジェクトを行います。
工作機械や3Dプリンタ、レーザーカッターなどがあり、メンターのサポートを受けることも可能です。プロジェクトの最後には発表会があり、良かったものは毎年3月に米国テキサス州オースティンで開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に学生チームを派遣するようなこともやっています。
もちろん出口は単に展示会に出して終わりということではありません。新しく生まれたモノをベースにビジネスプランを作ってみるなど、いろいろな事業化の可能性を追求しています。
参加する学生は、最初は「ビジネスプランよりモノを作ることが好き」という学生が多いのですが、モノが注目されることでビジネスの世界に入ることも結構あるので、さらに進展させていきたいと考えています。