Intelは既に、ディープニューラルネットワークの訓練や実行を高速化するためのチップを開発する複数のプロジェクトに取り組んでいる。その同社が「Loihi」チップによる、まったく異なったアプローチを通じてAIの問題を解決しようとしている。
Intelはディープラーニング(深層学習)分野において、これまでに複数の企業を買収し、製品ロードマップを更新してきている。新たなポートフォリオには、ニューラルネットワークを訓練するための「Knights Mill」プロセッサや、「Lake Crest」アクセラレータ(Nervana Systemsが開発した技術に基づく)に加えて、これらのモデルを実行するためのプロセッサとして「Xeon」や、AlteraのFPGA、コンピュータビジョン用の「Movidius」が含まれている。
そして、Intelのポートフォリオに、今回発表されたLoihiが加わった。しかしこのチップは、従来のものとは少し異なっている。まずこのチップは、同社のArtificial Intelligence Products Group部門ではなく、Intel Labsによる成果だ。Intel Labsは、この試験用チップの開発におよそ6年を注いでいる。また、Loihiはこれまでとはまったく異なる「自己学習型の」ニューロモーフィックアーキテクチャに基づいており、AI分野のより幅広い問題に取り組める可能性を秘めている。
人間の脳を模倣するコンピュータというコンセプトは新しいものではない。カリフォルニア工科大学の科学者であるCarver Mead氏は1980年代にこのコンセプトに取り組み始め、「ニューロモーフィック」という言葉を作り出した。しかし、同氏の取り組みの大半は科学プロジェクトという形態に終始し、商用化にこぎ着けることはほぼなかった。Intel Labsの上級プリンシパルエンジニア兼主任科学者のNarayan Srinivasa氏はインタビューで、同社がなぜこの道に進むという選択をしたのかについて説明している。
Intelはムーアの法則に従い、シリコンチップ上のコア数を増加させ続けてきている(同社は米国時間9月24日の週に、メインストリームのデスクトップPC向けチップでは初となる、6コアを内蔵した製品を発表するとともに、最大18コアを内蔵した「Intel Core i9」チップの出荷を開始している)。しかしSrinivasa氏によると、多くのワークロードはこれらのコアすべてを活用できておらず、結果的に「ダークシリコン」と呼ばれている問題につながっているという。つまり、こういったコアを構成するトランジスタに常時電力を消費させるのは非効率的だというわけだ。この問題に対処するために、より効率的なアーキテクチャだけでなく、これらコアがもたらす利点をすべて引き出せるようなワークロードというものが業界に求められている。