もう1つの理由は「VMごとの自動QoS機能の有無」(Harty氏)である。Tintriならさまざまなアプリケーションが混在した環境で、個々のアプリケーションごとにQoSを制御できる。
NutanixのHCIを当初導入したShireでは、「単一のアプリケーションで検証した際には良い性能が出ていたが、実際にデータセンターに持っていったら性能が出なかった」(Harty氏)
オンプレソフトのIaaS移行は高くつく
Tintriのストレージは、オンプレミスや自社データセンターにおいて“エンタープライズクラウド”(一般的にはプライベートクラウド)を構築するためのストレージである。業務アプリケーションを利用する業務部門に対して仮想のストレージを提供できる。クラウド事業者にとっても、ユーザー企業にクラウドサービスを提供する基盤として利用できる。
Harty氏は、オンプレミスにエンタープライズクラウドが必要になる理由として「ユーザー企業が使うすべてのアプリケーションをパブリッククラウドに移行できるわけではない」と指摘する。
エンタープライズクラウドが必要な理由の1つは、信頼性である。アプリケーション側で信頼性を確保していない場合、このアプリケーションはパブリッククラウドに移すのは難しいという。
「多くのアプリケーションは、アプリケーション側で信頼性を確保しておらず、ハードウェアなどのインフラに信頼性を委託している。こうしたアプリケーションをクラウドに移すと、障害発生時に可用性を確保できない」(Harty氏)
エンタープライズクラウドが必要なもう1つの理由は、パブリッククラウドに置くことでメリットが出るアプリケーションがそもそも限られるというものである。
「(動画ストリーミングサービスの)Netflixなどのように変更が激しいアプリケーションがパブリッククラウドに向く。パブリッククラウドなら、ユーザー数の増加にすぐに対応するといった需要に応えられる」(Harty氏)
この一方、会計アプリケーションなどのように負荷が一定で更新頻度も少ない領域では、オンプレミスのソフトウェアをIaaSに移行すると、高く付いてしまう。「すでに会計ソフトを稼動させているなら、IaaSに移さずに現状維持した方が安上がりだ」(Harty氏)。「NetSuite」のようなSaaSなら運用管理を委託できるのでクラウドサービスを使うメリットがある。
ハイパーバイザとコンテナは補完関係
Tintriのストレージはハイパーバイザによる仮想マシン向けのストレージだが、ハイパーバイザと競合する存在に「Docker」などのコンテナ技術がある。コンテナについて、Harty氏は「ハイパーバイザとコンテナは、ともにメリットがあり、補完関係にある。用途に合わせて使い分ければいい」と説明する。
コンテナのメリットは、処理負荷のオーバーヘッドが少ないことや複数のコンテナをセットにしたシステム一式を瞬時に簡単に配備できることなどである。アプリケーションの開発環境やテスト環境を迅速に調達するといった用途では利便性がある。
ただし、コンテナにはハイパーバイザと比べてデメリットもあるとHarty氏は言う。例えば、コンテナの基盤であるOSが障害で停止するとコンテナも停止してしまうし、基盤となるOSにセキュリティの問題が発生した場合はコンテナにも影響が及んでしまうといった具合である。
システム基盤としては、コンテナと並んで「OpenStack」も著名である。しかし、「OpenStackは複雑さが原因でサポート費用が高く付く。複雑さが解決されない限り、一般企業が使うのは難しい」とHarty氏は指摘する。「開発環境なら、OpenStackとハイパーバイザの組み合わせよりも、コンテナとコンテナ運用ソフト(Kubernetes)の組み合わせの方がいいだろう」(Harty氏)
米Tintri社内でも開発環境としてOpenStackを使っている。ところが、開発者が使っているにもかかわらず、外部のサポートサービスが必須であるという。「OpenStackのサービスチケット費用は、OpenStack環境で使っているハイパーバイザのライセンス費用よりも高く付いている」(Harty氏)