同氏によれば、Dallas Starsには設備投資費と運用費のどちらを優先するかという絶対的なルールはなく、このことがデジタル変革を進める上で有利に働いているという。しかし、たとえ経費が節減できても、追加費用は常に発生するものであり、CIOは特定のデジタル変革の取り組みを進める前に、エンドユーザーからの支持を獲得する必要があると同氏は述べている。
「これは技術的なソリューションだという考え方にとらわれすぎるべきではない」とDoggendorf氏は言う。「やっているのは、今事業部門がすでに行っていることのデジタル化だ。従って、事業部門のエンドユーザーが実際にそれを望み、支持しているのかを確かめる必要がある」
3.非営利組織の従業員をクラウドにつなぐ
サンディエゴ観光局(San Diego Tourism Authority)がデジタル変革の取り組みを始めたときには、もっと大きな目標が念頭にあった。米カリフォルニア州サンディエゴ市に観光客を誘致する活動を行っているこの非営利組織は、IT予算を20万ドル削減しつつ、在宅勤務者のコミュニケーションと接続性も改善しようとしている。
同組織のITおよびオペレーション担当バイスプレジデントを務めるIsabel Sauebrey氏によれば、観光はサンディエゴで2番目に大きな産業であり、1年に3490万人もの観光客が訪れているという。同組織の歴史はかなり古く、IT部門の掲げる重要な目標の大部分は、古いレガシーシステムを廃止し、可能な限りツールを整理統合することだった。
San Diego Tourism Authorityはシステムを近代化する取り組みの中で、10年目のERPシステムをクラウドに移行し始めた。具体的には「Oracle ERP Cloud」が選択され、これによってホスティングやサポートの経費が削減でき、同時にアップグレードのための設備投資経費も不要になった。アップグレード作業は全体的に見れば苦痛の少ないもので、システムは使いやすく、新しい機能も早く利用でき、実装も速かったとSauebrey氏は述べている。
レポーティングに関しては、「Tableau」を選択し、すべてのシステムを1つのレポーティングプラットフォームに統合した。
Sauebrey氏は「Tableauは、ほかのBIツールと比べ比較的低コストのソリューションで、開発のためのITリソースを割かなくても、スーパーユーザーをトレーニングしてレポートを作成させることができる」と述べている。
現在、同組織は「Microsoft 365」の導入に取り組んでいるが、これは単純に現在のOfficeスイートを最新版にアップグレードするよりも、コストが高いことが明らかになった。しかし、クラウドストレージと「SharePoint」が利用できることがメリットだという。
San Diego Tourism Authorityのデジタル変革に対するアプローチは、IT予算の削減に関連する明確な目的の中で組まれている点で珍しい例だと言える。この事例は、企業や組織が投資を行うことで、費用を削減しつつ、同時にプロセスを改善できる場合もあることを証明している。
「これらの取り組みを進めることで、ITチームはイノベーションに集中し、開発コストを削減し、メンテナンスに時間をかけずに済むようになった」とSauebrey氏は述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。