この調査結果は、IT部門の現状とも合致している。筆者は最近、AIの影響について複数のCIOと話をした。どのCIOも、この技術の潜在的な影響力を理解していた。また一部のCIOはすでに、職場の生産性とパフォーマンスを向上させるために、ロボティクスを利用していた。
しかし実際の、地に足の付いたAIの導入事例はほとんどなかった。
同じことが仮想現実(VR)や拡張現実(AR)についても言える。CIOはそれらのテクノロジに関心を示したし、中にはすでに関連するシステムやサービスを、自分たちのビジネスで利用できるかどうか検討しているケースもあった。しかしむしろ、大規模な企業規模の導入がまだ行われていないことの方が目立った。
少なくとも、CIOがこれらの萌芽的な領域に対する予備的な調査に投資しているという点は、Gartnerの予想やアドバイスと一致している。
2017年のハイプサイクルでは、3つの先進テクノロジのメガトレンドに焦点を当てている。その3つとは、「どこでもAIとなる世界」「透過的なイマーシブエクスペリエンス」「デジタルプラットフォーム」だ。
同社によれば、エンタープライズアーキテクトやイノベーションリーダーは、ビジネスに対する将来的な影響を理解するために、この3つのメガトレンドについて可能性を探り、概念化すべきだという。これは合理的なアドバイスだと言えるだろう。イノベーションに関しては、CIO向けのほとんどすべての記事で、実験の重要性が強調されている。
しかし、試してみるには費用がかかる。IT予算は多くの場合、もともと限られている上に、一般に大きなプレッシャーを受けている。このコストに敏感な環境では、十分なリソースを与えられた研究開発部門を持つ余裕のあるCIOの数は限られている。
5年以上あとにビジネスに影響を与える可能性のある話題の先進技術に(しかも結局ものにならない可能性がある中で)予算をかけられるCIOはさらに少ないはずだ。
CIOの平均在任期間は、4年前後であるということにも触れておくべきだろう。自分の任期が終わってからずっと先のテクノロジ導入について計画するのは、よほど先見の明がある人でなければ難しい。また組織の記憶が続く時間は短いため、あまりにも早い時期にプロジェクトを進めてしまうと、実際にそのテクノロジが一般に普及する頃には、忘れられてしまっている危険もある。