イノベーションは魅力的に見えるが、ほとんどのCIOは、各事業部門の責任者が認識している業務上のニーズに力を集中している。
価値を重視する組織では、ITプロジェクトに対して、事業部門の責任者が今直面している課題を解決する、効果的なソリューションを短期間で提供することが期待されている。
今進んでいるのはデジタル変革のためのプラットフォーム整備
それらのビジネス上の課題は、デジタル化による市場破壊に対する恐怖と密接に結びついている。IT部門以外の企業幹部は、動きの速い競合企業が獲得した競争上の優位性を意識しており、同様のメリットを与えてくれるテクノロジへの投資を求める。
サイバーセキュリティに対する恐怖感が高まっていることもあり、CIOが冒険的なIT投資を行う余地はほとんどなくなっている。
このため、ほとんどのCIOは、AIやVRへの投資よりも、デジタル変革のプラットフォームになるテクノロジへの投資に集中している。CIOへのインタビューで繰り返し語られているのは、プラットフォーム整備の取り組みだ。AIやVRなどのイノベーションに対する熱意は低いが、クラウドやビッグデータは熱心に取り入れられている。
単純な事実として、好むと好まざるとに関わらず、CIOや事業部門の責任者は、まだ数年前にもてはやされたITの要素技術にとらわれている。クラウドやビッグデータが今でも話題になることが多いのは、これらのテクノロジがようやく、本物の主流の技術として導入される段階に入ったところだからだ。
IT市場でもてはやされている話題は、CIOが抱えている現実よりもかなり先行している。クラウドコンピューティングとビッグデータは、ようやく生産性の安定期に達してきたところだ。これは、世界的な法律事務所Clyde & CoのCIOであるChris White氏が述べている、ITトレンドが市場に受け入れられるには、多くの場合、期待されているよりも時間がかかるという意見とも一致する。
「クラウドが最初に登場したとき、一部の人はこれは単なるアウトソーシングだと考えた。これは世の中を変えるテクノロジを代表するものだと信じた人もいた」とWhite氏は述べている。「私は常に、クラウドの熱心な支持者だった。あれから10年経って、オンデマンドITはようやく現在と未来のテクノロジの世界で重要な要素になった」
これは多くの意味で重要な教訓だ。Gartnerがハイプサイクルで言及しているテクノロジの多くは、企業に影響を与えるようになるまでに、まだ何年もかかる。CIOの支出の優先順位に合った提案をしたいなら、マーケティング関係者は、あまり遠い未来に焦点を合わせるのは避けるべきかもしれない。
多くの組織にとって、イノベーションとは、依然としてクラウド、ビッグデータ、モバイルの費用対効果の高い組み合わせである可能性が高い。CIOと対話するときには(そしてCIOの需要を満たしたいなら)、流行の話題に乗せられないほうが良さそうだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。