#2:アナリティクススタックの拡大
今まではアナリティクスと言えば、データウェアハウスやレポート、ダッシュボードが、そして最近ではビジュアルインターフェースやウィジェットといったものだった。つまり、ドリルダウンや、相関関係への着目によって、興味の対象となる領域で何が起きているのか、そしておそらくは、なぜそういったことが起きているのかを見極めるということを意味していた。
このようなアナリティクス(それぞれ「記述的アナリティクス」と「診断的アナリティクス」と呼ばれている)は、いずれも消え去っていない。ここまでが2016年の状況だった。これは今でも当てはまる話である一方、専門家以外でもデータ駆動型分析の技術に熟達している人々が数多くいる現状を考えた場合、企業を差別化できる要素とはならなくなっている。
記述的アナリティクスと診断的アナリティクスがコモディティ化されるとともに、われわれは「予測的アナリティクス」や「処方的アナリティクス」に向かってスタックを拡張しつつある。予測的アナリティクスは今までに起こった事象に基づいて次に起こることを予測可能にするものであり、処方的アナリティクスは望ましい成果を達成するために適切な行動をとるためのものだ。
予測的アナリティクスや処方的アナリティクスは多くの場合、従来のソフトウェアエンジニアリング技法を用いて手作業で処理手続きを開発していくのではなく、ML技術を活用し、過去のデータを用いてアルゴリズムを教育していき、将来のデータを予測することになる。また、処方的アナリティクスはさらに複雑な手順を踏むという点で、ほぼ間違いなく人工知能(AI)の領域にあるものであり、現時点で活用できている企業はほとんど存在していない。
これまでにも語られているように、MLアプリケーションの爆発的増加、そして盛り上がりの背後にあるのは、アルゴリズムの進歩というよりも、さまざまなケースでMLを活用できるだけの十分なデータとプロセッシングパワーが蓄積されてきているという事実だ。
この分野はまさに爆発しているところであり、そこには独自のMLアルゴリズムやMLアプリケーションをゼロから開発できる「Spark MLLib」や「Caffe2」「TensorFlow」「DeepLearning4J」といったMLライブラリから、自社環境にML機能をもたらす「Salesforce Einstein」や「SAP HANA」「GoodData」といった埋め込み型のアナリティクスフレームワークのほか、AmazonやFacebook、Uber、YouTubeをはじめとする企業による特徴的なアプリケーションや、これら企業による同分野への貢献に至るまでのあらゆる成果が含まれている。