はじめに
年間22兆円もの仕事が国や地方自治体などの公共機関から民間企業へ発注されていることをご存知だろうか?その中には読者も馴染みのある「システム開発」や「システム保守」など、IT関連企業が参入できる入札案件も多く公示されている。これら入札案件の情報はすべて各機関のホームページに公開されており、多くの企業が売上増や信用度アップのために入札に参加している。
この公示情報を入手した企業は入札に参加をし、数百万円~数千万円(中には数億円規模)の仕事を受注する権利を掴むことになる。落札できれば公共機関との取引実績もできるので、社会的信頼度も増すことになる。もし今まで入札案件に見向きもしなかった企業があれば、「売上と社会的信頼向上の機会をみすみす見逃した」ということになる。
図表1 国内入札マーケット全体の金額推移(中小企業庁「官公需契約の手引_平成29年度版」)
図表2 京都府庁のホームページに公示されている「京都援農隊マッチング支援システムホームページ制作業務」の公示書
入札とは?
公共機関が何かしらの発注をする際、発注先の企業を選定するために実施する取り組みである。例えば、横浜市役所で「ホームページ開発」のニーズが生まれたとする。その際、その案件を世の中に広く公開しなければならないというルールがある。
そのルールに基づき、その案件は横浜市役所のホームページに公開される。その案件を受託したい企業は見積金額や企画を提示し、その内容が一番良い企業に対して横浜市役所はその案件を発注する。この一連の流れが入札であり、全国7000以上(入札情報速報サービスNJSS<エヌジェス>調べ)の公共機関から、年間100万件以上(金額にして22兆円以上)が民間企業へ発注されている。
入札というと、老舗大企業ばかりが参加をしているというイメージがあるかもしれないが、実は創業5年以内の企業において、入札へ新規参入をしてから2年以内に約8割の企業が成果を出しているデータがある。図表3は新規参入してから受注までの期間である。
図表3 全国中小企業団体中央会「官公需受注啓発普及事業報告書」
「中小企業向けの入札案件を増やす」という方針が国によって定められており、中小企業には追い風が吹いている。中小企業庁が毎年発表している「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」では、官公需総額のうち中小企業・小規模事業者向け契約比率を上げていくことが主旨となっており、中小企業の参入が進んでいる(官公需法制定時(昭和41年度)の実績比率は26%だが、在は約53%まで上昇)。