本連載「サイバーセキュリティ未来考」では、注目のキーワードを読み解きながら、企業や組織におけるセキュリティ対策のこれからを占う。
世界的に広がる「常時SSL化」とは
「常時SSL化に対応しました」と発表するウェブサイトが増えている。PCやスマートデバイスなどでウェブサイトを閲覧する際には、ウェブブラウザとウェブサイト(ウェブサーバ)の間で通信が行われるが、その通信を暗号化することを「SSL化」や「SSL/TLS化」「HTTPS化」と呼ぶ。
SSLやTLSは暗号化の手法のことで、これにより通信が暗号化されると、プロトコルが「http」から「https」に変わる。これはウェブブラウザのアドレスバーに表示されるURLアドレスで確認できる。SSL化は、ウェブサーバ側がサイトに「SSLサーバ証明書」を適用することで、ウェブブラウザとウェブサーバ間で暗号化を確立する。常時SSL化は、これをウェブサイトにある全てのページに適用するものだ。Googleによると、常時SSL化されたウェブサイトの割合はグローバルで約25%を占めるという。
通信を暗号化しないhttp(非SSL化)のページで、IDとパスワードなどのログイン情報や、氏名や住所といった個人情報、クレジットカード番号などの決済情報などの重要な情報を送信してしまうと、第三者に通信を盗み見されれば重要な情報が知られてしまう。そこで、重要な情報を入力するようなウェブページは以前からもSSL化されていた。
「https://~」で始まるURLは暗号化通信が行われる
また、SSL化にはSSLサーバ証明書を使用するが、証明書によってはウェブサイトを公開している企業や団体などの実在性も証明しており、証明書から確認できる。このため、フィッシングサイトなど「なりすまし」のサイトかどうかを判断する基準にもなる。ただし、証明書の種類によるので注意が必要だ。これについては後述する。
常時SSL化によるサーバ側とユーザー側のメリット
常時SSL化は、ウェブ閲覧の安全性を高めることを目的に、Googleが中心となって推進している。例えば、Googleの検索順位を決める際のアルゴリズムで、SSL化ページを優遇すると2014年に発表している。つまり、ウェブページをSSL化した方が、ユーザーがキーワード検索をした際に表示される結果の順位が上がるということだ。
またGoogleは、同社が提供しているウェブブラウザ「Chrome」では、SSL化されていないページを開いたときに、アドレスバーに「保護されていません」と警告を表示する。この警告表示は、Internet ExplorerやEdge、Firefoxなどのブラウザも追従している。
Chromeブラウザの「安全ではない」の表示例
Chromeブラウザでは、さらにサイト内検索のページの警告表示を強化したり、SSL化したページであっても使用しているSSLサーバ証明書の種類によって警告を表示したりする計画だ。ウェブサイトを公開している企業や団体などは、より高い認証により発行されるSSLサーバ証明書を使用しないと、アクセスしてきたユーザーに警告が表示され、不安にさせてしまう可能性がある。
ウェブサイトを公開している側は、ウェブサーバにSSLサーバ証明書を導入する必要がある。しかし、ユーザー側は基本的にウェブブラウザを常に最新の状態にしておくことで、最新の証明書を利用できるため負担がない。また、以前はSSL化されたページの表示速度が非SSL化ページよりも遅いという問題があったが、最近では速度が逆転している。
というのも、以前はhttpのプロトコルが「HTTP/1.1」というバージョンだったが、2015年に「HTTP/2」へバージョンアップされた。実に約20年ぶりのアップデートであり、データのやり取りの方法などが高速化され、SSL化通信との相性が良くなった。このため、SSL化されたページの方が非SSL化ページよりも高速となっている。ユーザーとしては、SSL化されたページの方が快適なブラウジングが行えて、しかも暗号化され安全という状況になっている。