電子カルテや新労務管理システムの開発
日通システムは現在、ヘルス×ライフ・プラットフォームの機能拡充を進めている。2018年4月に、クラウド型電子カルテの提供を開始する。電子カルテを開発するIT企業を2017年に買収し、300床から400床の病院で月額50万から60万円と安価な利用料に設定する予定。複数の医療機関などと連携し、データの相互利用などを可能にする仕組みにもする。
労務管理システムもリニューアルし、2018年11月にもリリースする予定。テレワークや直行直帰など多様な働き方に対応する。労務コストを地域別、部門別などに分析し、従業員の働き方をとらえたり、サービス残業などを警告したりする。顔認証など本人確認端末との連携も図る。もちろん、スマートフォンからの利用を可能にする。
従業員や住民に、健康意識を高める策も用意する。健康診断など自身のデータをスマホなどからも見えるようにし、データ変化から食生活を改善したり、運動したりするなどに取り組めるようにする。スポーツジムや健康機器、健康関連商品、ヘルスケアサポートなど健康関連アプリを提供する企業と連携し、同プラットフォームから提供可能にする。すでに約50のアプリが載る。個人が自身の健康情報データを登録、管理するための「健康情報データバンク登録カード」を無償で発行する。2018年3月、東京都内のドラックストア3社を通じて、約100万枚を配布する予定だ。
こうしたサービスや機能の拡充によって、従業員らの変化を早期に把握する。この発見、予兆が職場や仕事など働く環境の早期の改善につながる。例えば、ストレスチェックでメンタル不調が変われば、負荷のかかる仕事をさせないだろう。食生活に問題があれば、改善を指導するだろう。こうした予兆や改善、指導が生産性を低下させる要因を取り払うことにもなる。
日通システムのヘルス×ライフ・プラットフォームへの投資は2018年度(12月期)でほぼ終わり、企業や自治体に本格的に採用を働きかけるフェーズに入る。健康経営のプラットフォーマへの挑戦が始まる。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。