40兆円を超す医療費の抑制と企業の生産性向上に向けて、政府が働き方改革やストレスチェックの義務化、長時間労働の抑制などの政策を打ち出している。そうした中で、人事や給与など就業システムを手がける日通システムが、働き方改革など企業の健康経営を支援するクラウド型ヘルス×ライフ・プラットフォームの提供を開始した。新しい労務管理システムや電子カルテなどサービス内容の拡充や健康アプリを開発する企業との連携も進めている。
ヘルス×ライフ・プラットフォームの提供ビジネスへ
名古屋に本社を置く日通システムは、オフコンディーラーとして1981年にスタートした。その後、人事・給与システムなど就業分野向けパッケージソフト「勤次郎」を開発し、軸足を移す。労務管理や人的資源活用(HRM)など適用範囲を広げるとともに、クラウド対応を図った結果、ユーザーは5000社弱に達する。2018年度(12月期)の売り上げも、25億円超を見込む規模になる。
そんな同社がヘルス×ライフ・プラットフォームの構築に取り組み始めたきっかけがあった。1つは、加村稔社長が交流のあった医療関係者から「企業に眠っている健康データを活用すれば、従業員の健康向上を図れる」と助言をもらったこと。もう1つは、2014年にストレスチェック制度が創設されたこと。
企業が1年に1回実施する従業員の健康診断やストレス状態などの定期検査のデータを健康経営に生かせる。そこに、勤怠・人事・給与などの就労データから過重労働やサービス残業、休日取得、有給取得などを可視化すれば、さらに効果を高められる。国民健康保険組合の健康診断やレセプトなどのデータを活用すれば、中小企業や住民へと広げられる。
ただし、多くの企業は紙ベースの健康診断データを持っており、データを活用してない。そこで、日通システムはヘルス×ライフ・プラットフォームの開発に取り組み始めた。健康診断データやストレスチェック、就労データ、電子カルテなど健康に関するさまざまなデータの共通プラットフォームである。これらデータを分析することで、従業員や住民の生活の質的な向上や生産性向上に活用する。生活習慣病など疾病の予防・予兆にも活かす。そう判断し、同社は約3年前から利益を抑えてプラットフォームの開発に投資を振り向けたという。