独ITベンダーのSAP日本法人が2018年1月、ERPパッケージに次ぐ第2の柱とするLeonardoの本格展開を開始した。イノベーションを起こす方法論とツール、サービスの集合体であるLeonardoは、デザイン思考なども活用し、日本企業のイノベーションを支援する。
その先駆けが2017年10月にコマツやNTTドコモ、オプティムと立ち上げた建設生産プラットフォームLANDLOGだ。SAPジャパンの福田譲社長によると、LANDLOGはゲームチェンジャーによるイノベーションを55種類に分類したスイスのザンクトガレン大学発のイノベーション手法「ビジネスモデル・ナビゲータ」を活用したという。
福田社長
同手法はセルフサービス、課金モデルなどのイノベーションのパターンの中から選択し、それを使って変革に取り組むもの。例えば、ホテルの料金を10倍にする方法をいままではない視点で議論する。ファシリテータがそれをリードし、アイデアが数多く出るよう議論を活性化させる。
そんなファシリテータ約30人を抱えるSAPジャパンは、全社員にファシリテータとしての能力アップを図っている。議論に参加する者の本音を引き出す役割のファシリテータは「夜の飲み会を昼のオフィスに持ち込む雰囲気作りをし、自由に意見を言えるようにする」(福田社長)。上司の意見に従うことを避けるため、ファシリテータが議論を面白く楽しくさせて、発言しやすくする。出たアイデアは否定せず、どのように実現するか検討する。「ファシリテータは当社のウリでもある」(福田社長)。
とはいっても、日本企業がLeonardoの中核といえるビジネスやサービスを企画・設計するデザイン思考をうまく取り入れられるだろうか。「じゃんじゃんやって、じゃんじゃん失敗する発想のデザイン思考は、日本のカルチャーとは真逆になる。石橋をどんどん渡るスタートアップの考え方で、試作品も早く作る。日本企業はどうしても時間をかけて実物に近いものを作る。そうなると、壊したくない。最悪なこと」(福田社長)。試作作りは1年かけるのではなく、1カ月で作る。「やってみて、だめなら違うことを考える」(同)。
福田社長は一例を示す。数億円するMRI(核磁気共鳴画像法)を導入した病院は経営上からMRIの稼働率を上げようとする。ところが狭くて音がうるさいMRIに入るのを、子供がいやがり、撮影に時間がかる。子供はじっとしていられないので、何回もやり直すこともある。その課題を他社のMRIより優れている、音を小さくする、明るくする、などといった技術的な視点、経営的な視点で解決しようとする。「普通はこう解くだろう」といった過去の方法ではなく、人の心理や人に焦点を当てた解き方を考える。1つの答えは、子供が喜ぶような動物の絵をMRIにペイントすること。この考えをビジネスに適用したのがデザイン思考だという。