展望2020年のIT企業

大企業のお蔵入りした技術を助っ人で救う--マクアケの製品開発支援

田中克己

2018-02-02 07:30

 クラウドファンディング事業を展開するマクアケが、企業内に埋もれた技術を生かして製品化を支援する「インキュベーションスタジオ事業」に本腰を入れ始めている。資金面や顧客ニーズ、需要予測、社内調整などの理由から、お蔵入りしたアイデアや技術を使った製品作りを支援するビジネスだ。

 2010年から2013年までベトナムでベンチャーキャピタリストとして活動していた同社の中山亮太郎社長は「日本のプロダクトが急速にプレゼンスを失っている」ことに危機感を持ったという。

 「日本の大企業は、世界が追いつけない技術を持っている。イノベーションの種はあるし、優秀な人材はいるし、作る能力に長けている」のに、新しい製品やビジネスを創出する壁がある。在庫リスクなどを避けて、目先の利益を優先することもあるだろう。そんな壁を取り払うのが、インキュベーションスタジオ事業に思える。

チャリティ・サイトや投資サイトにみられる

 ベトナムにいたころ、中山社長は「思い切って、こんなものを作りたい」という企業人を後押しする環境や仕組みを考えていた。そんな折、インターネット広告などを展開するサイバーエージェントがクラウドファンディングを手掛けるという話があり、中山氏に声がかかったという。「クラウドファンディングで、新しいことに挑戦できる環境が作れる」と思った中山社長は帰国し、事業立ち上げ前に、製造業や飲食店、映画会社など300社超の企業にクラウドファンディング活用を尋ねたところ、すべて断られた。「いい事業で、救世主になる」などと言っても、実はチャリティサイトや投資サイトなどとみているからだ。

 中山社長は「クラウドファンディングは、新しいアイデアを前に進めるもの」ととらえていたのに、世の中にそのイメージがなかった。事業化はなかなか難しいと思っていたところ、スタートアップの時計メーカーの経営者に「中山さん、クラウドファンディングは資金調達だけではないでしょう。量産前のマーケティングが大きなメリットになる」と指摘された。テスト販売などマーケティングの重要性を教えてもらったのだ。「カネ集めの発想だったので、目から鱗だった」(同)。

 それを切り口に提案活動したら、ソニーが電子ペーパーを使った腕時計の試作品作りに採用してくれた。これを契機に、製造業が量産前のマーケティングツールとして活用するなどの商談が増えたという。具体的には「こんな製品を作りたい」「こんな店を作りたい」などといったアイデアを魅力的なものにしたり、クラウドファンディングを使ってのテスト販売やニーズを調べたりするなどのコンサルティングである。

 その中心的な役割を担うキュレーターが「こんな製品を作りたい」と相談が持ち込まれたら、どのターゲットに対して、どう魅力を伝えるのかをサポートする。社員約50人のうち約15人がキュレータだという。

 「マクアケはいわば小さな展示会場として、小売業のネタ元になっている」(中山社長)。販売店が新しい商品を探したり、世の中のトレンドや市場ニーズをつかんだりするために利用しているという。例えば、折りたたみ電動バイクを開発したスタートアップが試作機のテスト販売に活用したところ、1億数千万円の申し込みがあったという。ニーズが証明されるとともに、ある自動車関連販売会社との販売契約にもつながった。

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