クラウドで切り開け“超ローカル新聞”の未来--岩手・岩手日日新聞社

編集・構成 怒賀新也(編集部) 2018年03月17日 07時30分

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 「ハイパーローカル新聞」として、2016年1月に、岩手県大船渡市の東海新報社の取り組みを紹介した。まもなく、同じ岩手県の地元新聞社、岩手日日が、この記事をきっかけの1つとして、電子新聞プロジェクトを立ち上げた。

 岩手日日は、盛岡市より南に位置する一関市に拠点を構え、約5万6000部を発行する新聞社だ。山岸学社長が電子化を打ち出したのは2014年1月。同年4月1日には、報道記者だった菅原祥氏(現デジタルコンテンツ室副部長)が1人で立ち上げる運びとなった。「当初は、社内の多くの人が電子新聞の発行に懐疑的だった。自分も含めて、必要だと理解しながらも、採算性や人員体制などを考えると慎重にならざるを得なかった」と菅原氏は振り返る。

デジタルコンテンツ室副部長を務める菅原祥氏。岩手日日は、これまで交流の機会が少なかった東海新報社と記事交換という形で連携するようになった
デジタルコンテンツ室副部長を務める菅原祥氏。岩手日日は、これまで交流の機会が少なかった東海新報社と記事交換という形で連携するようになった

 AR(拡張現実)活用などで“紙面とITの融合”を模索しながら先進事例を研究し、2016年春、電子新聞の具体的な検討に入った。この時点でも、発行部数、地域性の中で、コストを吸収できるのかを大命題に、費用対効果への不安は消えなかったという。そこで目に入ったのが、大船渡市、東海新報社の取り組みだった。菅原氏は「東海新報電子新聞の現場を見学し、効率化されたオペレーションに触れて、自分たちもできると確信した。そのシステムに関わる各社の熱意、率直さも背中を押してくれた」と話す。電子化、同一システムの採用をきっかけに地元新聞社間での交流や連携が生まれ、記事交換も始まった。

 2017年2月から、新しい岩手日日のウェブサイトと電子新聞の同時構築、事業計画が本格化し、同年7月にウェブサイト「Iwanichi Online」、8月には「岩手日日電子新聞momotto(モモット)」をリリースした。電子新聞の愛称は“岩手日日をもっと便利に、もっと楽しく”との思いを込めて名付けたという。新聞の一覧性を生かすとともに、速報性や紙幅に縛られない柔軟さをもつウェブの特徴を取り入れ、シンプルで見やすいサイトデザインにもこだわった。電子新聞の独自企画もあり、デジタルコンテンツ室によるロングインタビュー、特集記事、写真・動画などをタイムリーに掲載する。現在は、同室の5人と編集局からの応援社員の計6人体制で運用している。

 菅原氏は「紙の新聞、電子新聞どちらも岩手日日のキラーコンテンツは『地域密着』の記事。地方には地方なりのニーズがあり、家族IDの高校生から80代シニアまで幅広い世代に購読してもらっている」と手応えを語る。その一方で「予算内で省コストのシステムを作ることはできたが、内容や実績は、まだまだこれから。コンテンツ制作にしても、運用・管理にしても失敗や課題がある。その経験を、視察に来た新聞社など“同志”に伝えるのも自分たちの役割だ」とも語る。

 少子高齢化の影響も考えると、新聞は規模に関わらず、広告売り上げや発行部数の減少が予想されている。「岩手日日は2018年に95周年を迎えた。100周年、さらに次の100年も見据えて電子新聞をやっていこう、読んでみようという機運を高めていきたい」と菅原氏。岩手日日の電子新聞プロジェクトを、関係者の寄稿を交えて紹介していく。

電子新聞の運用・管理に当たるデジタルコンテンツ室の5人と編集局応援社員(左)
電子新聞の運用・管理に当たるデジタルコンテンツ室の5人と編集局応援社員(左)

NCRI株式会社 熊谷恵津子(プロジェクトリーダー)

 今回の「ハイパーローカル新聞の改革」は、地元の複数の中小ITベンダーの協力で構築してきました。この構造は、これからのクラウド時代に中小ベンダーが対応する方法の一つを体現しています。それに関連して、今回の記事は、私たちがなぜ電子新聞「サービス」ではなく「プロジェクト」と称しているかを伝えたいと思います。

 その過程では、実際にプロジェクトに関わる現場のメンバーの率直な意見やIT業界課題なども共有することで、具現化してきたことから、多くの地方・中小ベンダーの皆様に、複数ベンダーによるIT・クラウドの方法論について理解を深めてもらい、新しいクラウド市場にチャレンジしてほしいと考えています。

 まずは、簡単に各企業のプロジェクトにおける役割を紹介します。

アベデザイン

 ハイパーローカル新聞プロジェクトで高い評価をもらった理由の1つにデザインがあります。今回ロゴからサイトのデザイン、チラシ、名刺まで対応していただくことで、ブランド・コンセプトの維持を実現しました。

テラソリューション

 ハイパーローカル新聞プロジェクトにおける心臓部でもある、電子新聞のアプリケーション開発を担う青森県のITベンダーです。「それはできない」と言いたくない勉強熱心な技術者集団です。顧客視点でかゆいところに手が届く提案をしてくれました。

RAPiC

 システム・サービスに関わる構築・運用における知識があり、世の中のトレンドや技術について多くの知見を持ち、誰にでも分かるように情報を提供してくれました。クラウドサービスを提供する上で欠かせないノウハウであると、今回確信致しました。

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