ネットワーキング企業であるCisco Systemsの調査は、クラウドの急成長ぶりを示している。ハイパースケールデータセンターの数は、2016年の338から、2021年までに628へと増加すると予測している。その頃には巨大データセンターが、データセンター処理能力全体で占める割合は3分の2を超え、データセンターに保存されているデータの量も、ほぼ同じ割合を占める見通しだという。
これは企業が計算能力を購入、管理する方法に、大きな変化が起こることを示唆している。
大規模なクラウドプロバイダーは確かに、アプリケーションとデータを管理する上で、より効率的で安全な番人かもれしれない。しかし、われわれはごく一握りのテクノロジプロバイダーに過度に依存している恐れがある。実に多く卵を、ごく少数の(非常に大きな)カゴに入れているのではなかろうか。
保険大手Lloyd'sが2017年に発表した報告書によると、米国のクラウドプロバイダー大手が約3〜5日間、業務停止を余儀なくされるような「深刻な」サイバー事件が発生した場合、業界の損失は少なくとも156億ドル(約1兆7000億円)に達するという。また別の調査によると、攻撃者が大手クラウドプロバイダーをダウンさせた場合を想定すると、被害額は500億~1200億ドル(約5兆5000億~13兆3000億円)に及ぶ可能性があり、これはハリケーン・サンディ(訳注:2012年に米国を襲った大型ハリケーン)やハリケーン・カトリーナに匹敵する規模だという。
規制が答えになり得るか?
クラウドへの移行により、計算能力が電力のようにユーティリティ化すると見る向きも多い。しかし電力会社などの公益事業は、社会で非常に重要な役割を担っているからこそ、厳しい規制を受けている。クラウドコンピューティングもユーティリティになるのであれば、クラウドプロバイダーもより厳しく規制すべきかもしれない。
クラウドコンピューティングの売りは長らく、セキュリティだった。自社のコンピュータシステムのセキュリティを確保するために、時間とお金を存分にかけられる企業は限られている。また往々にして、社内に必要なスキルを持つ人材がいない場合がある。間に合わせの継ぎはぎシステムには、ハッカーが悪用できる脆弱性がつきものだと、専門家は警告する。それに引き換え、クラウドプロバイダーのシステムはきちんと設計され、一流のエンジニアが管理している場合が多い。