「コア」「成長」「将来」の3方向で描く事業戦略とは
では、法人向けPCにおける今後の事業戦略についてはどのように描いているのか。九嶋氏は図2を示しながら、「コア」「成長」「将来」といった3つの方向性で考えているという。
まず、コアというのは、まさしく法人向けPCそのものを指す。その意味では、今回の新製品もコアである。つまり、コアという言葉には「PCそのものを継続して変革していく」という意図が込められている。その中でも現在、最も注力しているのが「セキュリティ強化」ということで図2にそう記されている。
図2 法人向けPCにおける今後の事業戦略(出典:日本HPの資料)
これに対し、成長は「新たなイノベーション」を起こす領域である。現在、事業化を進めているものでは、PCおよびそのライフサイクル管理を一元化して月額料金のサービスとして提供する「Device as a Service(DaaS)」や、次世代の「リテールPOS」などが、この領域のまさしく“成長株”だ。ここではとりわけDaaSに象徴されるように、製品よりも「サービス」が主役だ。つまり、「サービス強化」が成長の原動力になるとの考え方である。
そして、将来は「カテゴリの創造」に向けて、「先進的な使い方を開拓していこう」という領域である。現在、事業化を進めているものでは、イマーシブコンピューティングやVR(仮想現実)・AR(拡張現実)・3D技術の活用が、将来につながるとの考え方だ。九嶋氏は、この将来においてキーワードになるのは「エクスペリエンス(体験)」だと強調した。つまりは、先進的な使い方によって、ユーザーに感動体験を提供できるかどうかがカギになる、というのがHPの考え方だ。
最後に改めて強調しておきたいのは、「コア」「成長」「将来」というのはHPの法人向けPCの事業戦略として「3つの段階」を意味しているのではなく、それぞれ現在進行形で動いている3つの方向であるということだ。図にすれば図2のようにシンプルだが、その進め方にはHPの“深謀遠慮”を感じさせられた。
今回の新製品を皮切りに、今後どのような製品やサービス、そしてエクスペリエンスを感じさせてくれるか、大いに注目しておきたい。