移行および製品戦略
Rosecrans氏によれば、Desk.comとIQ CRMの顧客からは、広範なプラットフォームの機能を利用したいという要望が上がっていたという。
Sales Cloud EssentialsとService Cloud Essentialsは、上位プラットフォームと同じ機能を数多く備えている。例えば、「Lightning」のインターフェースや、ノーコードワークフロー、モバイルインターフェースなどがそうだ。製品戦略の観点から言えば、Salesforceにとっては、Essentialsによって中小企業向けの製品を統合できる。
SalesforceのCRMアプリケーション担当エグゼクティブバイスプレジデントMike Rosenbaum氏は、Essentialsでは、営業とカスタマーサービスを1つのインスタンスで実現できるという、上位プラットフォームと同じメリットを享受できるようになったと述べている。
「Essentialsは、中小企業のニーズに合わせて、Salesforceのエンタープライズ向け機能を提供するように設計されている」とRosenbaum氏は言う。
では、移行に消極的なIQ CRMとDesk.comの顧客はどうなるのだろうか。「IQ CRMとDeskのサービスが終了するのは残念だが、これは正しい製品戦略だったと考えている」とRosenbaum氏は説明する。「この移行については非常に慎重に検討し、顧客がスムーズに移行できるようにした。移行はどうしても必要になるが、移行後にはずっとよいサービスを得られるようになるはずだ。これまで要望があったあらゆる機能を実現している」
実際、Salesforceの製品戦略は合理的だ。同社は、Salesforce Essentialsに移行することで、同じ統合プラットフォームでより多くの中小企業をカバーできるようになる。ただし、中小企業が大手ベンダーに抱いている不信感を払拭する必要はあるかもしれない。これまで大手ソフトウェアベンダーは、大企業向け製品から機能を削ったバージョンで中小企業市場に参入し、大企業がその製品を購入し始めると手を引くということを繰り返してきた。そのことが、中小企業が大手IT企業に慎重になる場合がある理由の1つになっているかもしれない。
しかしSalesforceは、ある程度中小企業の信頼を得られる可能性が高い。Salesforceは大企業向けのプラットフォームになる前にも、小規模な企業や特定部門向けのサービスで強さを見せていた。