スーパーやアパレルなどの小売業から最近は金融機関や大学へと、モバイル・アプリを活用する企業、組織が増えている。用途もクーポン発行による集客から、スマートフォンを活用した顧客とのコミュニケーションや人材採用、製品カタログなどと広がる。そんな中で、企業向けにモバイル・アプリを簡単に作れるクラウドサービスを提供するヤプリのユーザーがこの2年間に急増し、250社を超えたという。ヤフーを飛び出して5年になる同社の販売戦略を探る。
拡大するモバイル・アプリ市場にチャンスを見いだす
「革新的なプロダクトを世に出す」。クラウド型モバイル・アプリ開発プラットフォームYappliを展開するヤプリの庵原保文代表取締役はそんな決意で、ヤフーを退社し、同社を2013年4月に設立した。ヤフー時代に知り合ったエンジニア、Webデザイナーの3人で、週末にチャットサービスなどのアイデアを考えたが、「作っても、誰も使ってくれないと思った」と、庵原氏は成功するイメージがわかなかったという。
そんな時、2人の友人から似たようなアプリを作れないかとの開発依頼が舞い込んできた。「管理画面からブラウザ上のドラッグ&ドロップで、アプリを作れるようにすれば」と考えた庵原氏らは、そのアイデアを元に開発に取り組み始めた。ただし、「小遣い稼ぎではなく、汎用的なプロダクトにしたかった」(庵原氏)ので、個別の受託開発は断った。ヤフー時代の経験もあった。「当時、宮坂社長は『我々の役割は新聞配達なので、情報をいかに早く快適に届けるかになる』と言っていた」(同)。情報アグリゲータとして、より多くの人に利用してもらえるものにするということだろう。
ヤフーに在籍した庵原氏らは遊びにもいかず、土日をつぶして、2011年4月から2年かけて開発に取り組んだ。そして、ヤプリの設立とともに、今の原型となるプログラミングやウェブの知識がなくてもモバイル・アプリを作れる開発プラットフォームのベータ版を出した。分かりやすく言えば、クーポンやポイントカード、SNS、ビデオなどのアイコンから必要な機能を選択したり、テンプレートからデザインを選んだりするだけで、モバイル・アプリが作れるもの。ヤプリは「誰でもアプリが作れる」と謳って、個人や中小企業に月額1万円でサービス提供を始めた。
しかし、利用者がなかなか増えなかった。そこで、創業2年目にターゲットを法人に変えた。特に大企業向けの機能を拡充し、サービス内容や料金体系、営業方法を変更した。結果、ECや店舗の集客、リアルタイムなコンテンツ配信、社内・業務用コンテンツ管理などに、スーパーやアパレルなどが同プラットフォームを使い始めたという。