成功する活用を伝授するカスタマサクセス・チーム
利用用途も広がっている。例えば製品カタログだ。新製品が次々に投入されるIT業界などは、製品カタログでは新製品情報を早く伝えられない。モバイル・アプリにすれば、カタログの作成費を削減し、営業担当者に販売ノウハウなどの伝授もできる。
学生への情報伝達手段として、関東学院大学や青山学院大学などがモバイル・アプリを活用する。「窓口の開室時間を知りたい」「学内でイベントを開催したい」「サークルを紹介したい」といった学生の要望に応えることも可能になる。新卒採用にモバイル・アプリを活用する企業もある。学生とのコミュニケーションを深めて、企業活動を理解してもらうためだ。確実なエントリーによる採用の活性化ともいえる。インターネットバンキングや情報提供などに新生銀行や千葉銀行など金融機関も、モバイル・アプリを利用し始めている。
ヤプリはこうした顧客と用途の拡大に対応するため、約1年前にカスタマサクセス・チームを設けた。顧客からの問い合わせに答える受け身のカスタマサポートとは違う。例えば、アクセス数が減っているユーザーを抽出し、新しい機能や効果的な使い方、活用の成功事例などを能動的に紹介する。目的は解約をなくすことで、「こうして売り上げ増を図れた」などといったビジネスを成功に導くための支援である。米クラウドサービス事業者などがすでに採用する仕組みだ。
「ちょっとしたアイデアが社会を変える」。庵原氏は中小IT企業にもビジネスチャンスが広がっていることを感じている。社員は2年前の約10人から約70人に増えた(2018年3月時点)。ビックデータの活用やターゲティング広告など付加価値の高いサービス機能を開発し、顧客と用途をさらに増やし、グローバル展開を図り、今後3年間でユーザーを1000社に増やす計画を練る。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。