成長市場をリードする企業が新年度の業績予想について、当初から「減収減益」を計画する“異常事態”が発生している。富士通とNECだ。いったい、どうなっているのか。
両社とも事業売却などの特殊要因があるものの……
富士通とNECが4月27日に、2017年度(2018年3月期)連結決算と2018年度(2019年3月期)業績予想を発表した。
2017年度については、富士通が売上高4兆983億円(前年度比0.8%減)、営業利益1824億円(同55.4%増)、当期利益1693億円(同91.4%増)で減収増益に。NECは売上高2兆8444億円(同6.7%増)、営業利益639億円(同52.6%増)、当期利益459億円(同68.0%増)で増収増益となった。
両社ともここ数年、大掛かりな事業構造改革を進めてきており、その成果が利益面に反映されつつあると見て取れるが、一方で今後の屋台骨となる新しい事業が順調に育っているかといえば、まだインパクトが弱いのが実情だ。
そんな中、今回の発表で筆者が非常に気になったのは、両社の2018年度業績予想である。富士通が売上高3兆9000億円(前年度比4.8%減)、営業利益1400億円(同23.3%減)、当期利益1100億円(同35.0%減)。NECは売上高2兆8300億円(同0.5%減)、営業利益500億円(同21.7%減)、当期利益250億円(同45.5%減)。すなわち、両社とも2018年度は当初から「減収減益」を計画しているのである。(図1、図2参照)
図1:富士通の2018年度業績予想(出典:富士通の資料)
図2:NECの2018年度業績予想(出典:NECの資料)
もちろん、かつてのような高度経済成長期ではなく、特にこの10年はリーマンショックや大震災が起きたこともあって経営の舵取りは難しくなっており、直近では両社とも事業売却などの特殊要因もある。とはいえ、それでも成長するIT市場で日本を代表する両社がそろって減収減益の見通しというのは“異常事態”である。