米ZDNet編集長Larryの独り言

CRM分野でセールスフォースに挑む?--SAPの野心と現実 - (page 3)

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2018-05-14 06:30

 これらはすべて、どういった意味を持っているのだろうか?筆者の考えは次の通りだ。

 SAPは同社のベースを保持した上で、これら企業に対してCRM製品も営業していく必要がある。現在のところ、SAPはSalesforceのフロントエンドという地位に追いやられている場合も多い。Oracleが人的資本管理(HCM)やCRMでの勝利をほぼすべての四半期で報告できているのには理由がある。同社はERPにバンドルすることができるのだ。ただMcDermott氏によると、こういったスイートは常に勝利を手にしているが、フロントエンドを無視してきているという。

 Salesforceはわれわれが考えているよりも脆弱な可能性がある。「Salesforce Lightning」は優れたUIフレームワークだが、Salesforce UIに不満を持つ従業員も数多くいる。その一方で、企業は交渉力の獲得に向けた他の選択肢を必要としている。また、Salesforceの顧客はアドオン疲れに陥っている可能性もある。

 Oracleはフロントオフィスに対する取り組みで先行しており、クラウド関連の複数の取り組みを連携させつつある。Oracleが、ERP関連でSAPからさらなる勝利を奪おうとしてそのフロントエンドを活用するとしたらどうだろうか?

 SAP対SalesforceのCRM戦争はストーリーとしては興味深いものの、論点を外している可能性がある。ロボティックプロセスオートメーション(RPA)とAIがCRMに取り込まれることこそが本当のストーリーだ。またこれに関して、Wedbush Securitiesの調査レポートでは、CRM分野でPegasystemsが大企業を顧客として獲得しつつあると指摘されている点に言及しておく価値があるだろう(OracleやMicrosoftもこうした企業として挙げられている)。WedbushのアナリストSteve Koenig氏によると、PegasystemsとSalesforceは大企業市場での競争を激化させているが、同市場の規模は両社がともに繁栄していけるだけの十分なものとなっているという。

 では、この点について考えてみよう。Pegasystemsはビジネスプロセスオートメーション(BPA)という観点からCRMに取り組んでいる。これにRPA、すなわち企業にさらなる生産性をもたらす観点を加えることで、ユニークな取り組みを展開できるようになる。Koenig氏は次のように述べた。

 われわれのインテグレーターのチェックにおいて、RPAの活用に向けて取り組むベンダーの中でPegasystemsは、(フロントオフィスでのユースケースに適している)デスクトップの自動化という、差別化できるテクノロジを有しており、無人環境での自動化で業界の先頭を走っている。この分野での競合はAutomation Anywhereと、英国に拠点を置くBlue Prismだ。だが両社は、大企業市場においてPegasystemsのような地盤を築けておらず、CRM製品やビジネスプロセス管理(BPM)製品での品ぞろえでも及ばないニッチベンダーだ。

 最終的に、SAPはSalesforceではなくPegasystemsに近い戦略を展開していくのだろう。McDermott氏のCRMに対するビジョンは、Pegasystemsのアプローチと似たものになりそうだ。SAPが企業に浸透しており、プロセスの自動化ノウハウも有しているのは明らかだ。PegasystemsやBlue Prismを買収するという可能性も考えられ、興味深い。Pegasystemsの目的は、AIを用いて営業担当者へのコーチングをパーソナライズするというものだ。

 まとめ:SAPのMcDermott氏がCRMを欲しているのは明らかであり、何らかの準備を進めている可能性もある。同社はこれらの論点から、さらにCRMに関するビジョンを描き出し、具現化していく必要があるだろう。


SAP 2018会計年度第1四半期決算資料より

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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