富士通 デジタルフロントビジネスグループ エグゼクティブアーキテクトの中村記章氏
既報通り、富士通とPivotalジャパンは5月10日に、Pivotalのパートナーシップ契約「Pivotal Ready Partner Program」を締結し、デジタルビジネス領域で協業すると発表した。富士通が、年次イベント「富士通フォーラム 2018」を開催したのに合わせて、富士通 デジタルフロントビジネスグループ エグゼクティブアーキテクトの中村記章氏と、Pivotalジャパン カントリーマネージャーの正井拓己氏がその内容について説明した。
富士通では、今回の協業を、同社が約3年前から提唱する「FUJITSU Knowledge Integration」を具現化する取り組みのひとつと位置づけ、2018年度第2四半期から、アジャイル開発と親和性が高いクラウドネイティブ基盤ソフトウェア「Pivotal Cloud Foundry(PCF)」を活用したインテグレーションサービスを提供。2018年度下期には、アジャイル開発手法などを用いて、新たなサービスやビジネスを顧客とともに開発する場として、東京・蒲田の富士通ソリューションスクエア内に、「富士通アジャイルラボ(仮称)」を開設することを発表した。
Pivotalジャパン カントリーマネージャーの正井拓己氏 開設予定の「富士通アジャイルラボ(仮称)」の50分の1の模型。キッチンや卓球台などが置かれる
富士通アジャイルラボでは、SoR(Systems of Record)とSoE(Systems of Engagement)を統合するシステムインテグレーションを通じて、日本企業のデジタル革新を支援するという。
また、2017年7月に開校した富士通デジタルビジネスカレッジにおいても、デジタル人材の育成において、今回の協業成果を通じて、アジャイル開発手法を採用することになる。
富士通は、Pivotalが六本木ヒルズに開設しているアジャイル開発の実践の場となる「Pivotal Labs」に、2018年4月から参加。アジャイル開発人材の育成を強化しており、今後、これらの人材をコア人材として、富士通アジャイルラボでノウハウ移転を行い、2020年度末には、富士通グループに、550人のアジャイルスペシャリストの認定者を育成する計画だ。
富士通 デジタルフロントビジネスグループ エグゼクティブアーキテクトの中村記章氏は、「ビジネス環境の変化に素早く対応するため、ICTの活用方法の見直しや、開発手法としてアジャイルの提供を求める声が高まっている。だが、その一方で、従来のITシステムが足かせになったり、ベンダーやSIer任せでは、ビジネススピードの要求を満たすことができないという声もあがってきている」と話す。
また、デジタルスキルを持った人材が不足していることや、経営トップを含めたマインド変革が進まないこと、既存シテスムを含めた全体最適化のためのツールや技術が必要で少ないこと、請負型ではない開発パートナーとの新たな関係構築が必要であるといった課題も散見しているとし、顧客とSIerが、目的、責任、リスクを共有し、共創実践による新たな価値を創出する体制づくりも必要となると、デジタル変革を取り巻く環境や課題について言及した。
「いま求められているのは、柔軟性、MVP(Minimum Viable Product)、短期開発といったアジャイルの手法と、品質、性能、セキュリティといった基幹システムに求められる要件を両立した『エンタープライズアジャイル』という考え方である。基幹システムに対するSIerの知見と、アジャイル開発プロセスを融合することで、SoRのデジタル革新に向けて最適化したアジャイル開発技術と方法論、管理手法が必要になる」(中村氏)