高度なマルウェア「VPNFilter」が猛威、54カ国50万台超のルータに感染

Alfred Ng (CNET News) 翻訳校正: 矢倉美登里 吉武稔夫 (ガリレオ)

2018-05-24 12:21

 54カ国で50万台を超えるルータやネットワーク機器が高度なマルウェアに感染しているとして、CiscoのTalos Intelligence Groupの研究者らが警告を発している。

 このセキュリティ研究者らが「VPNFilter」と呼んでいるマルウェアは、ルータ用キルスイッチを持ち、ログイン情報やパスワードを盗んだり、産業用制御システムを監視したりできる。

 Talos Intelligence Groupの研究者William Largent氏は、米国時間5月23日のブログで、攻撃を受ければすべての機器のインターネットアクセスが遮断される可能性もあると述べている。

 ルータへの攻撃が手痛いものとなるのは、インターネットアクセスを遮断できるだけでなく、ハッカーがこのマルウェアを利用して、パスワードの使用といったウェブ上の行動を監視できるからだ。米国と英国の当局は4月、ロシア人ハッカーらが世界中の膨大な数のルータを標的として、機器を利用した大規模な攻撃を計画していると警告した。その際、米連邦捜査局(FBI)はルータを「敵の手中にある恐ろしい武器」と呼んだ。

 Talos Intelligence GroupのディレクターであるCraig Williams氏は、電子メールで次のように述べている。「あらゆること可能だ。簡単に言うと、この攻撃は表から見えないネットワークを構築し、誰の仕業かわからないようにして世界を攻撃できるようにする」

 研究者らはこの新たなマルウェアについて、ロシアによる既知のサイバー攻撃に使用されたのと同じコードを数多く持ち、攻撃は「国家に支援されたものと思われる」と述べている。

 特にウクライナでは、「驚くほどのペース」でルータがVPNFilterに感染しており、同国では5月8日と5月17日に感染が急増した。Talos Intelligence Groupの研究者らは、このマルウェアがルータに感染する仕組みをまだ調査中だが、Linksys、MikroTik、Netgear、TP-Link、QNAPの一部デバイスが影響を受けることを明らかにした。

 Netgearは、VPNFilterについて認識しており、ルータのアップデートをユーザーに勧告していると語った。

 同社の広報担当社は電子メールで、「現在調査中であり、さらなる情報が得られたら、この勧告をアップデートする」とコメントした。

 ほかのネットワーク企業3社にもコメントを求めたが、回答はなかった。

 研究者らは、ウクライナへの攻撃が間近に迫っている可能性を懸念して、今の時点で研究結果を発表した。ウクライナは、米国と英国の当局者が「これまでで最も破壊的なサイバー攻撃」と呼ぶランサムウェア「NotPetya」など、ロシアによるサイバー攻撃の被害に何度も遭ってきた。

 ウクライナで2016年に起きた停電も、マルウェアを利用して産業用制御システムを標的にしたロシア人ハッカーらの仕業だとみられている。

 Ciscoが参加しているCyber Threat Alliance(CTA)は、VPNFilterを「深刻な脅威」と呼び、この破壊的な威力を持つマルウェアについて説明した。

 CTAのプレジデントであるMichael Daniel氏は、次のように述べている。「(VPNFilterには)破壊的な能力がある。柔軟なコマンド構造により、攻撃者はこのマルウェアを利用して、これらの機器を『ただの置き物』にできてしまう。普通はこういったマルウェアに組み込まれることのない能力だ」

 Talos Intelligence Groupは、VPNFilterを除去するためにできるだけ早くルータを工場出荷時の設定にリセットし、機器をアップデートするよう勧めている。

提供:Aaron Robinson/CNET
提供:Aaron Robinson/CNET

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. クラウドコンピューティング

    Snowflakeを例に徹底解説!迅速&柔軟な企業経営に欠かせない、データ統合基盤活用のポイント

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]