4人のひとり情シスが集合
まだ寒い日の夜、4人のひとり情シスが都内一等地にある路地を一本入った静かな雑居ビルに集合しました。初めて顔を合わせるということもあり、皆さんも最初は緊張していたのですが、時間がたつにつれて同じ道を進む人同士で議論が白熱して、最終的に3時間という長丁場となりました。
この時の座談会の議事録は約2万字に上りました。今回はその10%に相当する導入部分を紹介します。
それぞれ異なる会社での役割
座談会に参加した4人は、それぞれ業務の守備範囲が異なります。そのプロフィールは次の通りです。
- スーパーネオ主任:ITリテラシーが極めて高く、社長に進言できる近い存在で、全社の経営戦略にも意見を求められる参謀格。スーパー(超越)でネオ(新しい)なひとり情シス
- 旧情シス係長:段階的に情報システム部門の規模が縮小して、最終的に現在の人員の一人になった。元々は、COBOLのプログラマー
- 初めて情シス君:ひとり情シスで運営していた担当者の定年退職を受けて、後任者となった。2年間にわたる引き継ぎ期間の最中
- スタック先輩:約20年にわたって派遣型常駐エンジニアを続け、その後、中堅企業の情報システム部門のひとり情シスに転身。フルスタックエンジニアとして現場の第一線で働き続けることが信条
そして、司会の私(清水)と、一緒に戦略立案をしている同僚の木村佳博がアドバイザーで参加しました。
ひとり情シスの覆面座談会。左はじは清水博と右はじは木村佳博
ひとり情シスあるあるネタ--変わらないITリテラシー
清水:まずひとり情シスのあるあるネタについて、何か面白話や苦労話などをお聞きします。私も1000人近くのひとり情シスとお話させていただきましたが、ひとり情シスを取り巻く、あるあるネタをお話いただけますでしょうか? 木村もIT一筋でして、私以上にひとり情シスと会っていますので、まず口火を切らせていただきます。
木村:この1年間だけで600人ほどのひとり情シスに会いまして、通算すると2000人ほどの人たちと話しました。現場の悲喜こもごもとした話を聞きました。
よくある話としては、昔構築した業務系システムがずっと残っているというものです。「レガシー」と呼ばれる旧型のシステムなので早々に刷新したいのですが、当時のプロジェクトに関わった役員が抵抗勢力になってしまうこともあるようです。苦労話や武勇伝が語り継がれ、半ば伝説化しているケースもあるといいます。会社のことを思っての忠告なのでしょうが、向き合い方がとても難しいという話も聞きます。
旧情シス係長:20年ほど前に肝いりで入れたシステムがあります。当時の情報システム責任者が現在の社長にいまだに影響力を持っていて、たまに会社に来て「ちゃんと使っているか?」という感じでチェックしています。そのため、システムの入れ替えを提案できない状態にあります。
きっかけを見出してリプレースしなくてはいけないのですが、アンタッチャブルな存在なのでタイミングを見計らっています。基幹システムではなくサブシステムなので古くても影響は少ないのですが、ハードウェアの更新を続けても老朽化による障害の多発を常に心配しています。
木村:やはり、そのような現実はまだ多いのですね。また、ひとり情シスの担当者は、ヘルプデスクの仕事にもかなりの時間を割かれていると思います。
ヘルプデスク業務では、突然のトラブルコールが多いようです。「何もしていないのに急にシステムがおかしくなった」という問い合わせでも、何とかして痕跡を探し出して速やかに解決に導くという話を聞きます。その結果、「魔法使い」と呼ばれることもしばしばだといいます。喜ばしいのか悲しいのか、笑い話に近いものがあります。その辺りはいかがですか?
スーパーネオ主任:私なんか、「神様」と思われているところもあります。「神様なんかじゃないですよ」と言うと、「それじゃあ、神様に最も近い存在です」などと訳が分からないことを言われます。ただ、頼りにされているのはうれしいと感じています。
スタック先輩:社内でとても頼りにされるのはいいのですが、経営層から自宅のネット回線がうまくつながらないから見てくれと依頼されることもあります。ある程度は仕方ないと思うのですが、どんどんエスカレートして、最近では個人のスマートフォンを設定するところまできています。皆さんをサポートしてあげるのはいいのですが、その結果、やるべき仕事に割ける時間が減ってしまうので、時間管理や優先優位付けが難しいのです。
初めて情シス君:IT全般の知識もまだまだ不足している上、複合機の操作にも全く慣れていません。印刷方法に関する問い合わせや、製本印刷がうまくできないなどのトラブルが本当に多くて困っています。特に、ホチキスをどこに止めるのかという質問を度々受けます。情シス担当者なら複合機にも詳しいと思われているのがつらいところですね。
木村:ひとり情シスは、いかなる状況や場面においても、短期間で問題を解決できると思われがちですよね。従来は総務部の管轄だった電話もIP電話に代わってIT部門が管理するようになってきました。どんどん守備範囲が拡大する傾向です。