本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
富士通の田中達也 代表取締役社長
「Microsoftと富士通が働き方改革の最強チームと言われるようになりたい」
(富士通 田中達也 代表取締役社長)
富士通が先ごろ、自社イベント「富士通フォーラム」を都内で開催した。田中氏の冒頭の発言はその基調講演で、2017年12月に人工知能(AI)分野での協業を発表した米Microsoftとの関係について語ったものである。
「Human Centric Innovation:Co-creation for Success」をテーマに講演を行った田中氏は、まず現状と今後について次のように説明した。
「私たちは今、デジタル革新という大きな変化の中にいる。AIやIoTがビジネスや生活を大きく変えていく可能性がある。ただ、デジタルやAI、IoTという言葉には冷たい印象がある。自動化が進むことによって、人間が置き去りにされるのではないかとの不安の声もある。だが、革新を生み出すのは常に人だ。何かを実現したいという強い思いが共感を呼び、人と人とのつながりを生み出す。そこから多くのイノベーションが生まれてくる」
さらにこう続けた。
「デジタル化によって、人と人とのつながりを実現するハードルは、かつてないほど低くなった。そのつながりこそが、デジタル革新の推進力になっていく。富士通はつながるサービスを追求し、Co-creation(共創)に取り組んでいる。そこから生まれる成果は、人に帰っていくものでなければならない。だからこそ、私たちは常にHuman Centric Innovationを追求している。富士通はテクノロジで人を幸せにする会社で在りたいと考えている」
そして、Co-creationの実践例の一つとして、働き方改革への取り組みを挙げ、Microsoftとの協業について次のように説明した。
「この協業は、富士通のAI基盤であるZinraiとMicrosoftの先進技術、そして両社のさまざまなサービスを組み合わせることで、より柔軟で多様な働き方を実現するものだ。働く人がポテンシャルを発揮し、よりクリエイティブな仕事にフォーカスできるようにする。それがビジネスの成功と働く人の幸せの双方に貢献すると考え、両社で力を合わせることにした」
講演では、MicrosoftのSatya Nadella最高経営責任者(CEO)も「両社の協業により、お客さまに新たな価値を提供していきたい」とビデオメッセージを寄せた。それを受けて、田中氏が語ったのが冒頭の発言である。
富士通とMicrosoftの協業については、2017年12月25日掲載の筆者執筆コラム「富士通とマイクロソフト、AI協業の背景」をご覧いただきたい。この協業がまさしく田中氏の肝いりであり、Nadella氏との握手の写真にも意味があることをご理解いただけると思う。
MicrosoftのSatya Nadella CEOと握手した写真が講演で映し出された