パブリッククラウドの影響を受けてハードウェアベンダーの再編が進んだのは数年前、Hewlett Packard Enterprise(HPE)は新しい時代に向けた準備を製品(技術)、ビジネスモデルの両方で進めている。6月20日まで米ラスベガスで開催した「HPE Discover Las Vegas 2018」で新CEOのAntonio Neri氏は、「ライトミックス」としてハイブリッドコンピューティング構想を示した。
HPE GreenLake Hybrid Cloud
HPEが「ライトミックス」としてハイブリッド戦略を語るのは初めてではない。分社化が完了した直後に開催された2015年秋のHPE Discover以来、HPEはパブリッククラウドかプライベートクラウドかではなく、両方を組み合わせたハイブリッドを提唱している。
分社化当初から中心となって戦略を練ってきたNeri氏、「当時は信じてもらえなかったが」と振り返る。単に両方を利用するだけでなく、「自社のビジネスやニーズにあうハイブリッドクラウドの構築」が重要だというのがポイントだ。「クラウドは場所ではなく、体験だ。サービスを高速に提供するスピードとアジリティが必要だ」(Neri氏)。
正しいミックスを見出すだけではなく、実装も重要だ。企業の多くがハイブリッドクラウド状態にあるが、計画されたものではなく、技術の決定権限を持つ部門が増えた結果、偶然そうなっているに過ぎない、とNeri氏は指摘する。運用モデル、ツールセット、データのコピーが複数ある状態は無駄、不効率を生んでおり、セキュリティや規制遵守の点でもリスクが増える。
「HPEには個々の企業に適切なミックスを、適切な方法でシンプルに実装できる」とNeri氏は、「HPE GreenLake Hybrid Cloud」を発表した。2017年末に導入した従量課金で提供するサービスファミリ「GreenLake」を拡充するものとなり、2017年秋に買収したCTP(Cloud Technology Partners)、RedPixie、それに2017年末に発表したハイブリッドIT管理ソリューション「HPE OneSphere」の技術も一部利用する。プライベートクラウドではAzure Stackを、パブリッククラウドは発表時、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureを対象とする。
「HPEのソフトウェア定義技術を使い、ハイブリッドの運用モデルを標準的なサービスプラクティスに落とし込んだ。顧客は必要なリソースのみを利用できる」とNeri氏。共通のハイブリッドクラウド運用モデルをもち、HPEの自動化ツールを利用してセキュリティと規制遵守のモニタリングや制御ができる。これにより、無駄なコストを削減でき、パフォーマンスも改善する。
技術、課金モデルを補完するのが、ITサービスのHPE PointNextだ。PointNextの専門知識を活用することで、適切なミックスと適切な実装を見出すことができるとNeri氏。例として、全米最大の子供病院、Texas Children’s Hospitalを紹介した。
同病院では毎年6000人の子供が集中治療室に入るが、治療の改善のためにオペレーションを簡素化したいという課題を抱えていた。HPE PointNextはデータセンターをハイブリッドクラウド環境にし、システムの簡素化を実現して運用を改善。医師や看護師はシームレスにデータにアクセスできるようになった。AI利用によるデータの取得も進め、データの量は4倍に増えたという。データが増えることで、将来的に治療の質改善が期待できる。
ニュージーランドのエネルギー企業Trust Powerは規制緩和により、電力、テレコム、ブロードバンドのバンドルを提供する。柔軟性とスピードの改善を目的に、200のアプリケーションをハイブリッド環境にマイグレーションした。その後、2つ以上のサービスを購入する顧客は倍増し、全体に占める比率は40%になるなどの効果が出ているという。
「The Machineは大きな進化を遂げたが、中核にあるのはカルチャーと人だ」とNeri氏は述べた。