本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日立製作所の塩塚啓一 執行役副社長と、アビームコンサルティングの轟木光 シニアマネージャーの発言を紹介する。
日立製作所の塩塚啓一 執行役副社長
「2021年度までに世界トップクラスのソリューションプロバイダーになる」
(日立製作所 塩塚啓一 執行役副社長)
日立製作所が先頃、投資家向け事業戦略説明会を開いた。同社執行役副社長でシステム&サービスビジネス統括責任者兼社会イノベーション事業統括責任者である塩塚氏の冒頭の発言は、その説明会で、従来の情報・通信システムセグメントに制御プラットフォーム関連事業を加えたシステム&サービスビジネスの戦略について説明した中で、今後の目標として明言したものである。
塩塚氏によると、2017年度(2018年3月期)までの3年間において、情報・通信システムセグメントとして見たときの業績は、売上高としては2兆円前後でフラットに推移したが、調整後営業利益率が2015年度の6.7%から2017年度で9.4%に向上。2018年度も売上規模は変わらないものの、営業利益率を9.7%まで引き上げる構えだ。
その営業利益率向上については、事業ポートフォリオの変革とロスコスト削減・生産性向上による経営基盤の強化が奏功したという。そして現在進行中の2018年度もその流れを継続するとともに、2019年度から始まる「次期2021中期経営計画」に向けた成長路線への転換のシナリオを描いていくとしている。
塩塚氏の話で筆者が最も興味深かったのは、「2021年度までに達成したい目標」と題して示した図だ。この図は、2017年度の成長率と利益率から見た日立と競合会社を比較したものである。同氏は「日立のシステム&サービスビジネスはこれまで利益率の向上にこだわって取り組み、成果を上げてきた。しかし、世界に目を向ければ、利益率、さらには成長率においてもまだまだ十分ではない」と説明した。
図:2021年度までに達成したい目標
そこで掲げたのが、2021年度までに営業利益率10%超、年平均成長率5%超を達成し、図でいうと右上のスペースに駆け上がってグローバルトップクラスになるという目標だ。冒頭の発言もこの目標から取ったものである。それにしても競合会社の顔ぶれが、日立らしいところだ。
では、どうやってこの目標を達成するのか。その答えも含めて塩塚氏は、「日立のシステム&サービスビジネスは今後、IoTプラットフォームのLumada(ルマーダ)を事業の中核に据えたデジタルセントリックな事業体として、デジタルの力を最大化し、日立の社会イノベーション事業を牽引して、とくにグローバル市場で高い成長を実現していきたい」と力を込めた。
そして最後に、「私自身の2021年度までの目標としては、デジタルセントリックな事業体として売上高3兆円超、このうちLumadaを中核としたデジタルソリューションの割合を30%超、営業利益率3000億円超の“トリプル3”を達成したい」とも。まさしく覚悟を決めたスピーチとお見受けした。そのリーダーシップに注目しておきたい。